第97回医師国家試験 G問題 問10 [97G10]

97G10
正しいのはどれか.

a 交通事故による即死者の死亡診断書を交付した.
b 遺族の希望により自殺死を病死とした.
c 犯罪加害者の病状を報道機関に話した.
d 麻薬中毒者を無断で警察に通報した.
e 梅毒感染を同意なしで配偶者に告げた.




正答は【d】 です。


[a] 誤り。「自らの診療管理下にある患者が、生前に診療していた傷病に関連して死亡したと認める場合」には当てはまらないため、"死亡診断書"は不適です。

[b] 誤り。"自殺"は病死ではありません。死因の種類も9番になり、外因死です。遺族の希望があっても事実に即して判断・記載を行います。

[c] 誤り。犯罪加害者であろうとなかろうと、患者の病状を第三者に伝えることは原則不適です。法律的には刑法 第134条に"秘密漏示"について規定されています。

[d] 正しい? 厚生労働省発表では正答となっています。しかし、麻薬中毒の届出義務はあくまでも"都道府県知事"に対してとなっていますので"警察"ではありません。(麻薬及び向精神薬取締法 第58条の2)

[e] 誤り。"梅毒"は感染症法における5類感染症です。従って、診断から7日以内に患者の年齢、性別その他厚生労働省令で定める事項を最寄りの保健所長を経由して都道府県知事に届け出ること自体は問題ありません。しかし、配偶者に伝える場合は無条件ではなく、一定の条件(伝えなければ患者の命に関わる等)を満たさなければ後々問題になってくることもあり得ます。



前述のように、正答は[d]となっているのですが、個人的には"警察"というのがすごく気になります。

法律的には"都道府県知事"に届け出る義務はありますが、"警察への通報"については触れられていません。

「義務があるか?」という問題ではないので、一般常識的に「警察に通報しても許される」ということなのでしょうかね...。

ただし、医師には職業上の守秘義務があり、[c]の通り刑法で"秘密漏示"に関する犯罪が定められています。


細かい話になりますが、確かに覚醒剤中毒と医師の守秘義務に関する有名な判例はあります。

ただ麻薬と覚醒剤は法律上の取り扱いも違います。

ですので、果たして「大麻も覚醒剤と同じような対応で良いのか?」とも思いますし、これはかなり高等な法律的議論なのでしょう。


国試的には難しく考えすぎず、他の選択肢を除外していけば[d]を選ぶことは可能かとは思います。

ただ「"無断で"」と書かれているのもいやらしいです。

この一言で選ぶのを躊躇した受験生もいるかも知れませんね。



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