第110回医師国家試験 G問題 問19 [110G19]

110G19
死に関連した事項について正しいのはどれか.

a 死体の解剖は手術室で行わなければならない.
b 系統解剖は生前に口頭で意思表示があれば行える.
c 死産とは妊娠第6月以後における死児の出産である.
d 臓器移植にかかわる脳死判定は主治医が1人で行う.
e 臓器の移植に関する法律における臓器とは内臓と眼球とをいう.




正答は【e】です。


[a] 誤り。解剖は、手術室ではなく"特に設けた解剖室"で行わなければならないことが法律によって定められています。死体解剖保存法 第9条「死体の解剖は、特に設けた解剖室においてしなければならない。但し、特別の事情がある場合において解剖をしようとする地の保健所長の許可を受けた場合及び第二条第一項第四号に掲げる場合は、この限りでない。

[b] 誤り。系統解剖は、本人の意思表示だけなく"遺族の承諾"を受ける必要があります。死体解剖保存法 第7条「死体の解剖をしようとする者は、その遺族の承諾を受けなければならない。

[c] 誤り。死産は、妊娠6月以後ではなく"妊娠第4以後"における死児の出産を指します。死産の届出に関する規程 第2条「この規程で、死産とは妊娠第四月以後における死児の出産をいひ、死児とは出産後において心臓膊動、随意筋の運動及び呼吸のいづれをも認めないものをいふ。

[d] 誤り。脳死判定は、2名以上の医師によって行われなくてはなりません。臓器の移植に関する法律(臓器移植法) 第6条第4項「臓器の摘出に係る第二項の判定は、これを的確に行うために必要な知識及び経験を有する二人以上の医師の一般に認められている医学的知見に基づき厚生労働省令で定めるところにより行う判断の一致によって、行われるものとする。

[e] 正しい。臓器移植法における臓器は「内臓と眼球」であり、"内臓"は心臓・肺・肝臓・腎臓・膵臓・小腸の6つです。臓器移植法 第5条「この法律において「臓器」とは、人の心臓、肺、肝臓、腎臓その他厚生労働省令で定める内臓及び眼球をいう。



医事法関連の問題です。

割と細かな知識が聞かれていますが、受験生の正答率はまずまずだったようです。


"死体解剖保存法"には各種解剖および試料の保存について書かれています。

問題の通り、解剖は原則として"特別に設けた解剖室"、要は"解剖専用の部屋"で行う必要があります。

また、引取人がいない場合を除き、基本的に遺族の承諾が必要です。


条文の中には、死体解剖資格についても触れられています。(参考記事:死体解剖資格)

死体解剖保存法 第2条 死体の解剖をしようとする者は、あらかじめ、解剖をしようとする地の保健所長の許可を受けなければならない。ただし、次の各号のいずれかに該当する場合は、この限りでない。
一 死体の解剖に関し相当の学識技能を有する医師、歯科医師その他の者であつて、厚生労働大臣が適当と認定したものが解剖する場合

このように、医師・歯科医師の他、一定の基準を満たせば"その他の者"も認定されれば解剖することは可能です。(※ただしそのハードルはかなり高い)


また同様に、"監察医"についても言及されています。

死体解剖保存法 第8条第1項 政令で定める地を管轄する都道府県知事は、その地域内における伝染病、中毒又は災害により死亡した疑のある死体その他死因の明らかでない死体について、その死因を明らかにするため監察医を置き、これに検案をさせ、又は検案によつても死因の判明しない場合には解剖させることができる。

先ほどの"死体解剖資格"とは違い、"監察医"に関しては医師しか認められていない"検案"を前提としているため、こちらは「医師のみが監察医になることが可能である」と言えます。



"臓器移植法"についても出題されました。

特に正答であった選択肢[e]はかなり細かい知識ですよね。


解説の通り、臓器移植法 第5条で「臓器は心臓、肺、肝臓、腎臓その他厚生労働省令で定める内臓及び眼球」と定められています。

このうち"その他厚生労働省令で定める内臓"というのが、同法の施行規則に載っています。

第1条 臓器の移植に関する法律第五条に規定する厚生労働省令で定める内臓は、膵臓及び小腸とする。

これらより、「臓器移植法における"臓器"は、心臓、肺、肝臓、腎臓、膵臓、小腸、眼球の7つである」と言えるんですね。


また少し細かいですが、「脳死判定における4つの除外基準」も頭に入れておいてもよいと思います。

1 生後十二週(在胎週数が四十週未満であった者にあっては、出産予定日から起算して十二週)未満の者
2 急性薬物中毒により深昏睡及び自発呼吸を消失した状態にあると認められる者
3 直腸温が摂氏三十二度未満(六歳未満の者にあっては、摂氏三十五度未満)の状態にある者
4 代謝性障害又は内分泌性障害により深昏睡及び自発呼吸を消失した状態にあると認められる者

これらいずれかに該当する場合は、脳死判定は不適となります。



110G19.jpg