第101回医師国家試験 C問題 問4 [101C4]

101C4
死体検案で正しいのはどれか.

a 監察医が専任で行う.
b 異状死体が対象となる.
c 解剖を行う行為を含む.
d 遺族の承諾が必要である.
e 検案後は警察への届出義務がある.




正答は【b】です。


[a] 誤り。死体検案は医師なら誰でも行うことが可能です。監察医が選任に行うのは"行政解剖(監察医解剖)"です。

[b] 正しい。↓下図のように、検案②は異状死体が対象となります。

kenann-flowchart.jpg

[c] 誤り。検案は「死因等を判定するために死体の外表を検査すること」を指します。従って検案は解剖を含みません。

[d] 誤り。死体検案には遺族の承諾は不要です。司法解剖や死因身元調査法解剖、行政解剖も同様に承諾は不要です。

[e] 誤り。検案後、全例を警察に届け出なければならないわけではありません。あくまで「検案して異状があると認めたとき」です。逆に言えば「検案をして異状があると認めなかったときは、警察に届けなくてよい」ということです。



(死体)検案に関する問題です。(類似問題:94A30)

類似問題とほぼ一緒ですね。


前述のフローチャートは、厚生労働省のHPにあったものなのですが、、、

こちらをみると、どうやら検案は2種類あるようです。(※便宜上、検案①と検案②とします)

kenann-flowchart.jpg


検案① → まず最初に行われる検案。「異状があるかどうか?」(+死因)を判断するために行う。

検案①で「異状あり」と判断した場合は、24時間以内に警察に異状死体の届出を行わなければなりません。

検案①で「異状なし」と判断した場合は、死体検案書を交付することになります。


検案② → 2度目に行われる検案。検案①で「異状あり」と判断し、警察に異状死体届出を行い、警察による検視で"非犯罪死"と判断された後に死因を判断するために行う。

監察医制度のない地域では、主に警察医や一般臨床医が検案②を行います。

監察医制度がある地域では、検案②を主に監察医が検案を行うことになりますが、

検案をしても死因が判明しない場合、監察医であれば行政解剖を行うことができます。


"警察医・一般臨床医"と"監察医"で、ここが大きく違っています。

検案は「死因等を判定するために死体の外表を検査すること」ですから、そもそも死因に関する情報量は圧倒的に少ないです。

だからこそ、解剖の有無で情報の差はとても大きくなるのです。


以上より、選択肢[b]での検案は"検案②"のことを言っているということになります。

一方で、"検案①"では、検案をして「異状なし」と判断する場合もあるわけです。

なので、厳密に言うと「検案①の対象は必ずしも異状死体とは限らない」と言えます。

そういう意味では、単なる"検案"とだけ言っている[b]を正答にしているのはやや厳しく感じますね。



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