第105回医師国家試験 E問題 問35 [105E35]

105E35*
死体の眼瞼結膜に溢血点が強く発現する死因はどれか.2つ選べ.

a 溺水
b 絞頸
c 脳動脈瘤破裂
d 急性心筋梗塞
e 胸腹部圧迫による窒息




正答は【b, e】です。


[a] 誤り。教科書によっては、"急死"の所見の一つとして「溺水でも結膜の溢血点は出現し得る」とは書かれています。ただ確かに、"溺水"における溢血点は比較的少なく、正答である[b]や[e]の方が相対的に"強い"溢血点が発現すると考えれば、[a]は消せるかも知れません。

[b] 正しい。"絞頚"は結膜溢血点が発現する死因の典型です。"絞頚"では頚部血管が絞まるため、顔面のうっ血が起こり易いです。

[c] 誤り。脳動脈瘤破裂は強い溢血点の発現の典型例ではありません。脳動脈瘤破裂はくも膜下出血を来しますが、それは溢血点とは直接関係がありません。

[d] 誤り。選択肢[a]と同様、"急性心筋梗塞"も基本的に急死に分類されるため、一般的な急死の3徴としての"溢血点"は十分発現し得ます。ただその場合の溢血点は比較的大きさが小さく数も少ないため、"強く"発現するか?と言われれば、[b]や[e]の方が適切かと思います。

[e] 正しい。"胸腹部圧迫による窒息"も、"絞頚"同様にやはり顔面のうっ血は強いです。従って、眼瞼結膜の溢血点も比較的強く発現します。



"溢血点"に関する問題ですね。(参考記事:「溢血点・溢血斑」)

溢血点の典型例である"絞頚"や"胸腹部圧迫による窒息"に加え、"溺水"や"急性心筋梗塞"といった"急死"も選択肢に含まれているため、やや難問と言えます。


溢血点は「うっ血によって毛細血管が破綻し出血を来したもの」です。

ですので、頚部の血管が(中途半端に)絞まり、顔面のうっ血が起きやすい"絞頚"や"非定型的縊頚"では溢血点が生じやすいのですね。(参考記事:「縊頚」)


一方、解説にも書いたように、"急死"でも溢血点は確かに発現し得ます。
(cf. 急死の3徴;①暗赤色流動性血液 ②諸臓器うっ血 ③溢血点)

しかし、こちらは「"うっ血"によって発現する」というよりは、「血圧上昇・血管攣縮・血管透過性亢進の影響で発現する」と私は認識しています。

ですので、"絞頚"や"非定型的縊頚"に比べると、「一般的な急死所見としての溢血点は、サイズは小さく、数も少ない」と言われているのかな、と。


正答率としては8割を切っているようですので、やはり当時の受験生も悩んだようです。

もう少しだけ選択肢の並びを工夫すべきだったかも知れませんね。



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