102E42
69歳の男性.一人暮らし.肺癌の末期で在宅療養中であり,週3回の往診を受けていた.往診担当医が午後5時に患者宅に行くと,寝室のベッド上で仰臥位のまま死亡していた.外傷はなく,肺癌で死亡したと判断された.直腸温30.0℃.室温22.0℃.紫赤色の死斑を背面に認め,指圧で容易に消退する.硬直を全身の各関節に認めるが,四肢関節の硬直は軽度である.
死亡推定時刻として適切なのはどれか.
a 前日の午前9時頃
b 前日の午後3時頃
c 前日の午後9時頃
d 当日の午前3時頃
e 当日の午前9時頃
正答は【e】です。
[a][b][c][d] 誤り。
[e] 正しい。死後体温は1時間あたりおよそ0.8℃ずつ低下していきます。午後5時時点で直腸温は30.0℃です。室温は22.0℃なので、まだ直腸温は低下し切っていませんね。生前の直腸温が37.0℃と仮定すると、7℃低下したことになりますので、[ 7.0 (℃) ÷ 0.8 (℃/時間) = 8.75 (時間) ] つまり死後8.75時間経過していることになります。午後5時の時点で死後8.75時間経過している → 午後5時の8.75時間前 ≒ 午前 8時台。従って、選択肢の中で最も適切なのは"当日の午前9時頃"となります。
死亡時刻を推定する問題です。(類似問題:92E11, 98I24)
国試的にこういった死亡推定時刻の問題は、まずは必ず「直腸温が室温・環境温に一致してしまっていないか?」を確認する必要があります。
一致していなかった場合 → 直腸温による死亡時刻の推定 ※簡便
一致していた場合 → 他の検案所見等による死亡時刻の推定 ※やや面倒
と流れていきます。
今回の問題は幸い?直腸温は室温に一致していないので、問題回答の上では簡便で助かります。
計算式は解説の通りです。
この方法では、死亡したタイミングでの直腸温を37.0℃と仮定しています。
ですので、この前提が崩れる場合、例えば"感染症"や"覚醒剤の使用"によって高熱が出ている中で亡くなったケースでは、厳密に言えばこの方法は不適です。
従って、もし万が一、問題文に「感染症によって亡くなったと推定される」といったような記載がある場合は、この直腸温法ではなく、他の所見から死亡時刻を推定する方法でもよく確認してくださいね。
国試でそこまで踏み込む必要がある難問は出てこないとは思いますが・・・。笑