今回は『女性の法医学者ってどれくらいいるのか?』に答えたいと思います。
以前「7Kの記事」を書いた際に、法医学で働く女性について軽く触れました。
近年は女性医師の活躍がめざましく、法医学も例外ではありません。
しかし、「女性法医学者は実際どれくらいの人数・割合でいるのか?」というはなかなか知られていません。
2012年と少し古いデータですが、それを確認していきましょう。
まず結論として、2012年においては、
・女性法医学者は法医学者全体の『22%、281人』です。
・女性法医学医師は法医学医師全体の『15%、76人』です。
ちなみに同2012年の医師全体に対する女性医師の割合は"19.7%"でした。(2020年は21.9%と上昇)
それと比較すると、2012年当時は女性の法医学医師は比較的少なかったと言えます。
それでは詳しいデータをみていきます。
とりあえず始めにデータを列挙します。
日本法医学会員(≒法医学者):1257人
女性会員:281人 (22%)
男性会員:976人 (78%)
内 法医学医師数:518人
女性医師:76人 (15%)
男性医師:442人 (85%)
内 非法医学医師:739人
女性:205人 (28%)
男性:534人 (72%)
新規入会医師:57人/年
女性医師:15人 (26%)
男性医師:42人 (74%)
法医学認定医:178人
女性医師:11人 (6%) 全体取得率:34% 女性取得率:14%
男性医師:167人 (94%)
ここでは「日本法医学会会員≒法医学者」と扱っています。
しかし、必ずしも全員が実際の法医学実務に関わっているとは限りませんが、法医学者として働いている方はほとんどがこの学会に所属していると思いますので、この前提で話を進めていきますね。
法医学会は他の臨床医学系の学会と比べると、非医師の会員も多いというのが特徴のひとつです。
むしろ全体から見ると非医師の会員が過半数を占めており、法医学医(医師)は少数派と言えます。
これは臨床検査技師や薬剤師などの法医学者も会員となっているからです。
女性をみていきます。
ざっくりと女性法医学者は全体の20%、女性医師で言えば15%、女性非医師では30%という数字です。
冒頭に書いた通り、医師全体の女性率は2012年当時で"19.7%"でした。
ここには載せていませんが、他の学会の女性医師率と並べて比べると、法医学会は決して飛び抜けて高いわけではありませんが、低いわけでもないようです。
平均でみると法医学は低いように見えますが、学会によってかなり女性の偏在もありますので(眼科や小児科や周産期では女性比率が多い)、中央値で言えば法医学は大体中間くらいの印象を受けます。
ただし数としては、女性医師に限ると法医学医の15%ほど76人ということでかなりレアな存在です。
また非医師の法医学者の割合と比べても女性医師はやや少なめです。
法医学会への新規入会女性医師が、既存の女性法医学医師の割合よりも多いので、近年は女性法医学医師が増えてきていることがここから分かりますね。
このデータは2012年のものですが、最近は法医学でももっと女性医師の割合が増えていると私自身も感じます。
良い傾向ですね。
この他、女性医師支援という観点から、
・女性の評議員/役員/委員の割合
・出産等に伴う(旧)認定医/専門医の取得配慮があるか?
・男女共同参画に関わる専門部署があるか?
・学会で女性支援のセッションがあるか?
・総会で託児所はあるか? (参照:前回記事)
・再就職支援サポートや復帰支援があるか?
・実態アンケートを行っているか?
なども重要なポイントですね。
また少し趣旨は変わってしまいますが、法医学会は非医師の会員の方が多いのに、実際の学会で発表している法医学者は医師がほとんどな印象を個人的には受けています。
臨床系学会では「○○医学会」の"医"は医師を指しているという話もあるそうですが(なのでそこの会員は基本的に医師が多い)、法医学会の"医"は単純に法医学という意味だと思いますし、もっと医師に限らずいろんな立場からの発表や研究があって良い気がします。
ここがもう少し変われると法医学会ももっと発展できるのではないかと思ったりしますね。
話は戻しまして、皆さんはこれら女性法医学者に関する数字をみてどう感じましたか?
そもそも法医学者全体の絶対数が少ないので、そこからさらに女性となるとかなりレアな存在になってきます。
だからこそ、今活躍されている女性法医学者の先生方には頭が下がる思いでいっぱいですね。
確かに解剖など法医学には多少肉体労働もありますし、全体の法医学者も不足しがちなのでなかなか休みづらかったりして、なかなか女性にとってキャリアをイメージしにくいという現状はまだまだあるのかも知れません...。
今後もっとそういった環境が法医学でも改善され、女性にとって少しでも働きやすくなればいいなと思います。