法医学と臨床診療科

法医学者には"多彩なバックボーンを持つ人"が多いのも法医学の特徴です。

【臨床での診療科であれば何科と相性が良いのか?】

そう気になっている人もいると思います。

また「(将来)何科を勉強したらよいのか?」「何科に進んだらよいのか?」と悩んでいる医学生もいるかも知れません。

今回はそういった観点も含め『何科出身の医師がいるのか?』について詳しく書いていきたいと思います。



結論から言うと、

【ほぼ全診療科出身の法医学者が存在する】

です。

そして、どの科に進んでも法医学者として活躍できます。

細かくみていきましょう。



法医学は特定の診療分野・臓器には留まりません。

死後のご遺体全てを包括的に診ます。

臨床医学だけでなく、公衆衛生学や看護学、遺伝学、人類学、法律学までも関係してきます。

だからこそ、このような"多様性"が存在しているんですね。



法医学には、私のように研修医を終えてダイレクトに法医学に進む人間がいます。

一方で、その後もしばらく臨床医を続け、ある程度経った後に法医学の道に進む医師も多くいらっしゃいます。

そこで培った知識を法医学で活かせるわけです。

まして"臨床専門医"を持つ法医学者は鬼に金棒だと私は思います。(参考記事:法医学と専門医)



では実際に『何科出身の医師がいるのか?』

実際に挙げてみると、


・病理医
・救急医
・内科医
・外科医
・脳神経外科医
・整形外科医
・精神科医
・小児科医
・産婦人科医


パッと私が思い付くだけでも、少なくともこの診療科の先生は法医学にいらっしゃいます。(※非常勤や臨床の方をメインとしている方も含む)

法医学のその"多様さ"が理解できるでしょう。


病理学や救急医学は皆さんもイメージしやすいと思います。

他の診療科でも、例として、

『内科(特に循環器内科)』:法医学の死因の中で最も多い心臓病に強い
『脳神経外科』:頭部外傷など脳疾患に強い
『整形外科』:外傷・骨症に強い
『小児科』:小児突然死や児童虐待に強い

など、どの科においても法医学としての"強み"があります。



これを書くと、将来を悩む医学生さんの中には、

「それならばここに書いてある診療科に進もう」
「取り上げられていない診療科はやめておこう」

と考える人がいるかも知れません。


そういう考え方も確かにアリなのかも知れませんが、むしろ『逆に多様性があるからこそ、何科に進んでも良い』と私は思っています。

なので、(法医学のことは一旦置いといて)忖度なしに「自分が興味のある診療科」で学んでも全然良いのではないでしょうか。

それであっても十分その後の法医学の糧になるはずですよ。



ここまで私が書くのも、私自身ダイレクトに法医学へ進んだために、そういった「(研修医後の)臨床診療科を深く学べていない」ということに少し劣等感を感じているからなんです。

もちろんダイレクトに法医学に進んでも悪いことではないです。

法医業務に支障を来すことはほぼ有り得ないでしょう。


ただやはり法医学者の中で前述の"強み"というのを持っていない不安感はあるんですよね。

別に法医学は勝ち負けの世界ではありませんし、そこまで気にすることではないですが、研究などをしていると「もっと何かこう"強み"があればなぁ...」と思うことがしばしばあります。

実務をこなすことだけが法医学の仕事ではありませんからね。



私もかつてはそうだったのですが、法医学に興味のある人は目の前(法医学)しか見えていない人が少なからずいる印象があります。

ただそれでは駄目で、広い視野で物事を考えることが必要で、それは実際に法医学に入ってからも言えることだと思います。

ひとつの選択肢だけにとらわれるのではなく、多くの選択肢があることに気付き、最高の選択をしてほしいですね。



ちなみに医学生真っ最中の皆さんは特定の診療科にこだわる必要性は全くありません。

学生の間は医師国家試験合格することが最優先課題ですので、法医学に関係あるなしに関わらず、全診療科を精一杯勉強してくださいね。

悩むのはそれからで全然十分です。



いろんな人でこれからも法医学業界が盛り上がっていくことを心から願っています。