第105回医師国家試験 H問題 問25 [105H25]

105H25*
86歳の女性.監察医制度の指定地域にある自宅で死亡した.所轄の警察署が死因について犯罪との関連性はないと判断したので,死亡診断書の作成のため,2日前に初めて往診した医師が自宅に呼ばれた.しかし,前回の診療内容からは死に至った経過を説明できないことから,死因を明らかにするためには解剖が必要と考えられた.
この解剖はどれにあたるか.

a 行政解剖
b 系統解剖
c 司法解剖
d 承諾解剖
e 病理解剖




正答は【a】です。


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[a] 正しい。
[b][c][d][e] 誤り。選択肢[b]の"系統解剖"は論外ですね。犯罪性もないことから[c]の"司法解剖"も不適です。病院での死亡であるため、原則"病理解剖"でもないと思われます。そして冒頭に「監察医制度の指定地域にある」という記載があるので、ここは"行政解剖"に乗る流れが最も適当と思われます...が、遺族の承諾が得られているのなら、[d]承諾解剖でも決して間違っていないとは個人的に思います。



問題文を簡略化すると「病院外で亡くなった、犯罪性のない死因不詳のご遺体に対する解剖は何か?」ということになると思います。

この問題はきっと東京の先生がお作りになった問題だと思うのですが、監察医制度のない地域の受験生には正答はなかなか難しいのではないか?と個人的に感じました。

実際に受験生の正答率も8割を切っているようです。


監察医制度が導入されている地域では、院外で亡くなり、犯罪性が否定された死因不詳のご遺体は確かに実際"行政解剖"の流れに乗ります。

ところが、それ以外である監察医制度非導入地域においては、解剖が必要であるなら"承諾解剖"となります。
(※現在であれば死因身元調査法解剖/新法解剖になるか?)

ですので、全国で大多数である"監察医制度非導入地域"の受験生はきっと選択肢[d]を選んでしまったのだと思います。

ただし"承諾解剖"の場合は、必ず遺族の解剖承諾が必要です。

承諾に関する記載がないことも、選択肢[d]を少し疑うポイントになったかも知れません。

それに加え、あえて冒頭に「監察医制度の指定地域にある」という記載があるので、まだ大崩壊はしていませんが...これはちょっと悪問な気もします。


ちなみに、犯罪性がないご遺体に対しては"病理解剖"も行われ得ますが、解説の通り"病理解剖"はやはり"院内死亡"が原則になると思われます。

もちろん一部の病院では院外死の病理解剖も受け付けているかも知れませんが、主流ではないと思います。


なお、実際に問題文のようなご遺体の場合は「検案のみで死体検案書が交付されて終了(→解剖はしない)」となるケースが現実には最も多いと思います...。



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