109E21
監察医が行う行政解剖の目的として適切なのはどれか.
a 治療の適否
b 病巣部位の確認
c 生前の診断の正否
d 犯罪捜査上の鑑定
e 犯罪に関係なく,死因が明確でない場合の死因等の究明
正答は【e】です。
[a] 誤り。"治療の適否"、つまり「診断の妥当性や治療効果の詳しい検証」は病理解剖の目的とするところです。もしこの"適否"が係争点となるのなら、場合によっては"司法解剖"の範疇に入るかも知れません。
[b] 誤り。"病巣部位の確認"も[a]同様、病理解剖の目的の範疇に入るところかと思います。実際は、他の解剖でも当然に病巣部位の確認は行いますが、それが主目的というわけではありません。
[c] 誤り。"生前の診断の正否"も先の2選択肢と同様で、「治療の適切性の検討」として"病理解剖"の目的として挙げられます、
[d] 誤り。「犯罪捜査に関連した鑑定」は"司法解剖"の目的です。
[e] 正しい。非犯罪死体に対する死因究明目的の解剖は"行政解剖"の主目的です。近年は"警察等が取り扱う死体の死因又は身元の調査等に関する法律"が施行され、その中で規定されている"調査法解剖・新法解剖"では、"行政解剖"同様に「非犯罪死体に対する死因究明」が目的となっています。
"行政解剖"に関する問題ですね。
回答率を見ますと、選択肢[d]に若干受験生が流れてしまったようです。
これは完全にテレビドラマによる"誤った監察医のイメージ"のせいだと個人的に思っています。笑
『監察医は事件性のあるご遺体を基本的に扱いません!』
これは皆さんも肝に銘じておいてくださいね。
選択肢[e]の解説にも書きましたが、最近は"調査法解剖・新法解剖"という解剖が新設されました。(※法律上の地域制限はなく、全国で実施可)
このため、監察医制度のない地域であっても「犯罪に関係なく,死因が明確でない場合の死因等の究明」のために解剖を行うことが可能になりました。
受験生もこの点はしっかりと覚えておくべきだと思います。
とは言っても、実際にその実施件数には地域差がすごくあるんですけどね...。
監察医に関して聞いてくる国試問題は少ないので結構珍しいです。
第109回は他にも監察医について触れた問題もありますし、もしかすると出題委員の先生に監察医の方がいらっしゃったのかも知れませんね。