第109回医師国家試験 G問題 問18 [109G18]

109G18*
死亡診断書について正しいのはどれか.

a 病院が届け出る.
b 剖検所見は記載しない.
c 署名と押印とが必要である.
d 主治医以外は記載できない.
e 死因として老衰と記載できる.




正答は【e】です。


[a] 誤り。死亡診断書(+死亡届)の役所への届出は、"病院"ではなく"届出義務者"が行わなければなりません。届出義務者は戸籍法に定められています。戸籍法 第87条「次の者は、その順序に従つて、死亡の届出をしなければならない。ただし、順序にかかわらず届出をすることができる。①同居の親族 ②その他の同居者 ③家主、地主又は家屋若しくは土地の管理人

[b] 誤り。剖検を実施している場合、"有"に丸をした上で、解剖の主要所見を死亡診断書(死体検案書)の解剖欄に記載します。

[c] 誤り。現在は記載医師による署名が原則となっており、押印は不要です。

[d] 誤り。主治医でなくても「自らの診療管理下にある患者が、生前に診療していた傷病に関連して死亡したと認める場合」に該当するのであれば記載し得ます。「主治医かどうか?」は記載可否と関係はありません。

[e] 正しい。老衰も死因として記載は可能です。ただし記載できるのは「高齢者で他に記載すべき死亡の原因がない、いわゆる自然死の場合のみ」に限定されます。



死亡診断書に関連した問題です。(類似問題:89A6, 98E7, 100E7)

基本的に"死亡診断書(死体検案書)記入マニュアル"に記載されている内容ばかりです。

マニュアル自体も薄いですし、一読していれば容易に解答できた問題でしょう

、、、と言いたいところですが、意外と半数近くの受験生が間違ってしまったようです。


「"老衰"なんてぼんやりした病態を死因に書いていいのか...?」と思った受験生もいたのでしょうかね。

解説の通り、結論としては「高齢者で他に記載すべき死亡の原因がない、いわゆる自然死の場合にのみ記載が可能」です。

ただし、マニュアルの記載の後には但し書きがあって、

ただし、老衰から他の病態を併発して死亡した場合は、医学的因果関係に従って記入することになります。

とも書かれています。

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つまり、加齢によるものでなく、明らかに病的な肺炎や心疾患がある場合は"老衰"でなく、それぞれの疾患を死因として記載する必要があります。

この点は、単に超高齢であるからと言って安易に"老衰"という死因をつけないよう注意しなければなりません。



選択肢[a]については"死亡の届出"に関する事項でしたので補足します。

"死亡の届出"に関しては前述のように戸籍法(第86〜88条)に規定されています。


第86条 第1項 死亡の届出は、届出義務者が、死亡の事実を知つた日から七日以内(国外で死亡があつたときは、その事実を知つた日から三箇月以内)に、これをしなければならない。

第2項 届書には、次の事項を記載し、診断書又は検案書を添付しなければならない。
① 死亡の年月日時分及び場所
② その他法務省令で定める事項

第3項 やむを得ない事由によつて診断書又は検案書を得ることができないときは、死亡の事実を証すべき書面を以てこれに代えることができる。この場合には、届書に診断書又は検案書を得ることができない事由を記載しなければならない。


第87条 第1項 次の者は、その順序に従つて、死亡の届出をしなければならない。ただし、順序にかかわらず届出をすることができる。
① 同居の親族
② その他の同居者
③ 家主、地主又は家屋若しくは土地の管理人

第2項 死亡の届出は、同居の親族以外の親族、後見人、保佐人、補助人、任意後見人及び任意後見受任者も、これをすることができる。


第88条 第1項 死亡の届出は、死亡地でこれをすることができる。

第2項 死亡地が明らかでないときは死体が最初に発見された地で、汽車その他の交通機関の中で死亡があつたときは死体をその交通機関から降ろした地で、航海日誌を備えない船舶の中で死亡があつたときはその船舶が最初に入港した地で、死亡の届出をすることができる。


この"戸籍法"にまで手を出すと、もはや医師国家試験の範囲を逸脱してしまうと思うので、、、

手続対象者:親族、同居者、家主・地主・家屋管理人・土地管理人等(+後見人・保佐人・補助人・任意後見人・任意後見受任者)

届出期間:死亡の事実を知った日から7日以内(国外で死亡したときは、その事実を知った日から3か月以内)

届出先:死亡者の死亡地・本籍地、もしくは届出人の所在地の市役所・区役所・町村役場。

このあたりは常識として覚えていてよいと思います。



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