第110回医師国家試験 E問題 問9 [110E9]

110E9
司法解剖について誤っているのはどれか.

a 根拠法は死体解剖保存法である.
b 捜査上の鑑定のために行われる.
c 死因が明らかであっても行われる.
d 犯罪の可能性がある場合に行われる.
e 裁判所の許可(鑑定処分許可状)の下に行われる.




正答は【a】です。


[a] 誤り。司法解剖の根拠法は"刑事訴訟法"(第168条等)です。死体解剖保存法が根拠法となる解剖種は"行政解剖"(監察医解剖)や"系統解剖"、"病理解剖"です。

[b] 正しい。司法解剖は"犯罪の立証"や"犯罪性の有無の判断"といった捜査上の鑑定を目的として行われます。

[c] 正しい。[b]の解説の通り、司法解剖は"犯罪の立証"や"犯罪性の有無の判断"のために行われるため、仮に死因が明らかであっても行われるのです。

[d] 正しい。司法解剖は犯罪の可能性がある場合、つまり「"犯罪の関与が明らか"もしくは"犯罪の関与が疑われる"場合」に行われます。逆に言えば、犯罪の可能性が明らかにない場合には行われないとされています。

[e] 正しい。刑事訴訟法第168条第2項に規定されています。「裁判所は、前項の許可をするには、被告人の氏名、罪名及び立ち入るべき場所、検査すべき身体、解剖すべき死体、発掘すべき墳墓又は破壊すべき物並びに鑑定人の氏名その他裁判所の規則で定める事項を記載した許可状を発して、これをしなければならない。



"司法解剖"に関する問題です。

直接"司法解剖"について聞いてきた問題としては珍しいですね。

正答率は低くありませんが、選択肢[c]と迷った受験生が若干いたようです。


「死因が明らかなら司法解剖はやらないんじゃないの?」

こう思う方も多いかも知れませんが、それは誤りです。


司法解剖の意義・目的として、警察庁は例示付きで下記のように言っています。

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・犯罪の立証
・犯罪性の有無の判断

これら両者については、死因が明らかであっても、更なる解剖があり得ることがわかると思います。


例えば、ご遺体を見て、死因は明らかに包丁で頚を刺されたことによる大量出血であることが明らかとしても、

・これが他人によるものと判断してよいのか?自分で刺したことを否定できるのか?
・もし他人によるものであれば、どのような状態で刺したのか?

こういった点を解剖を通して明らかにし、裁判のために記録しなければなりません。


また問題にあるように、司法解剖は"捜査上の鑑定"の中で行われます。

従って、司法解剖はあくまで"捜査のため"に行われます。

【行政解剖】:公衆衛生の向上をベースとした死因究明目的。
【調査法解剖・新法解剖】:遺族等の不安の緩和・解消、公衆衛生の向上をベースとした死因究明目的。

"司法解剖"については、こういった他の解剖とは趣が違っていることを理解しておかなければなりません。


ちなみに裁判所によると、"鑑定"とは「専門性の高い分野について、特別の学識経験を有する第三者に意見を求める手続のこと」を言います。



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