副脾 [accessory spleen]

ヒトの臓器の数というのは決まっています。

脳や心臓、肝臓などは1つ。

肺や腎臓、副腎などは2つ。


それでは"脾臓"は一体いくつあるでしょうか?

答えは、、、1つ!

...確かに殆どの人にとって「脾臓は1つ」が正解です。

しかし、人によっては複数の脾臓を持っている人もいるのです。

今回はその複数の脾臓である"副脾"についてみていきたいと思います。



【副脾】:通常の脾臓の付近に存在する数cm(多くは1~2cm程度)のプチ脾臓。複数個が連なっていることもある。組織自体は通常の脾臓組織と変わらない。病的意義は乏しい。

An_accessory_spleen.jpg
※Wikimedia Commonsより


詳しくみていきましょう。



上記の通り、「複数の脾臓」とは言っても、"副脾"は文字通り"副(次的な)脾(臓)"であり、サイズは小さいです。

主である通常の脾臓が12×7×4cm程度に対して、副脾は直径約1cm程度のミニサイズです。

それでも割面を見ると分かるように、通常の脾臓と変わらず、ちゃんと白脾髄や赤脾髄を伴っています。

An_accessory_spleen.jpg


この"副脾"の成因ははっきりしていません。

「脾損傷に伴って千切れた脾臓や摘脾時の残存脾が副脾へ成長する」という後天的な説や、発生の過程で出来るという先天的な説があります。

外傷歴のない方にも副脾は認められるため、少なくとも前者だけの理由で出来るものではないと私は思っています。

また「剖検例の1割に副脾を認める」という古い文献もありますが、個人的な肌感としても頻度はそれくらいな気がしますね。


そして、副脾に病的意義は基本的にありません。

つまり「副脾があるからといって問題になることはぼぼない」ということですね。

従って、解剖で副脾を見つけても「あ、この人は副脾を持っている人だね」となるだけです。


ちなみに、"副脾"に似た"多脾症"(→こちらは脾臓が多数に分葉している)という疾患があるのですが、

こちらは「多脾症は多くで心奇形を伴っている」という点で病的意義があると言えます。



以上、気付けばそこにいる、、、今回はそんな"副脾"を取り上げました。

解剖をしていると、黄色い脂肪の中に紫色の副脾がポンと出てくるのですごく目立ちます。

病的意義は乏しいものの、頻度は比較的いですから、法医学者としてやっていれば必ず出会うことでしょう。