必要な法医の人員数

「法医学者は少ない」

そんな声をよく聞きます。

以前の記事で、法医の人員数の詳細について取り上げました。(参考記事:「法医学教室の人員数」)

令和2年5月1日時点では、『520人(全国) = 152人(常勤医師) + 116人(常勤歯科医師等) + 114人(大学院生等) + 138人(常勤職員※解剖補助員等)』

つまり【常勤法医は152人】という結果でした。


そこから数年経ち、最新のデータ(R4.5.1時点)は↓の通りで【常勤医師は158人】です。

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何となく「約160人はさすがに少ないんじゃないか?」

そうは思っても、実際問題として「では具体的に、法医学者は何人必要なのか?」についてはあまり議論されません。

そこで、今回はある論文をご紹介して、法医の不足を見つめ直していきたいと思います。



引用元情報は下記の通りです。

著者名:伊藤貴子, 小湊慶彦, 黒木尚長, 吉田謙一
論文タイトル:"法医学者人材不足の現状"
雑誌:医学のあゆみ 228 (12), 1183-1186, 2009-03-21[医歯薬出版].
雑誌URL:https://www.ishiyaku.co.jp/search/details.aspx?bookcode=922812
CiNiiリンク:https://cir.nii.ac.jp/crid/1520010380805355776

この論文を基にして、法医の必要数についてみていきます。




著者は、病理で使用されている病理専門医の基準数の計算式(A式)を法医学用に修正し(B式)、それを用いて計算しています。

病理用(A式)
A={(年間剖検数×標準所要時間)+(年間組織検体数×標準所要時間)+(年間迅速診断数×標準所要時間)+(年間細胞診検体数×標準所要時間)}÷年間勤務時間

法医用(B式)
B={(年間司法解剖数×標準所要時間)+(年間司法解剖数×鑑定書作成にかかる標準所要時間)+(監察医務機関における年間総検案数×標準所要時間)+(監察医務機関における年間行政解剖数×標準所要時間)+(監察医非施行地域における年間承諾解剖数×標準所要時間)}÷全国の法医数

そして、著者が調べて出してきた各解剖数や標準所要時間を代入して、、、

結論として、この論文が出された2009年当時では『535人の法医が必要』という結果になっています。(※ちなみに当時の法医認定医数は119名)


必要法医【535人】に対して、実際の常勤法医は【158人】。(現時点での法医認定医数は約140人)

houi-ninnteii.jpg

本来は、現在の3倍以上の法医が必要なわけです。

もちろん、"常勤"だけで158人なので、数字には出てきていない"非常勤法医"の存在を考慮に入れる必要はあります。

しかし、実際に"非常勤法医"なんて殆どいないでしょうから、結果的に535人には到底足りません。

まして近年は解剖の需要も更に高まってきていますので、【535人】も現状を鑑みるともっと多い可能性だってあります。


具体的な数字をみて、法医学者の人材不足が皆さんにもお分かりいただけたかと思います。

これからどうなっていくのか...注視していく必要があるのは言うまでもありません。


※今回私自身かなり注意を払った上で論文を引用させていただきました。もし万が一引用に問題あると感じた関係者の方がいらっしゃいましたら、お手数ですがメールフォームにてご連絡いただけますと幸いです。迅速に対応させていただきます。