白血球からみる性別 [ドラムスティック白血球]

"性別判定"というのは法医学においても重要なテーマです。

現在ではDNA型判定技術が発達しているので、DNAさえ採取できれば性別を判断するのはそこまで困難ではありません。(参考記事:「DNA性別鑑定」)


しかし、そういった遺伝子技術がない頃はどうしていたのか?

そんな頃の性別判定で使用されていた性別判定所見のひとつが"ドラムスティック白血球"です。

仮に身体が失われており、肉眼的な見た目で判断できない場合であっても、実は顕微鏡で好中球(白血球の一種)を観れば性別が分かることがあるのです!


詳しくみていきましょう。



ドラムスティック白血球(好中球):女性の数%〜十数%に認められる好中球の太鼓ばち状の核突起。女性の不活化されたX染色体が濃縮されて出来る。

実際に図で見た方がわかりやすいと思います。

drumstick.jpg


これです。

この核からチョコッと飛び出たバチ状突起のことですね。

発見者の名前を取って"Barr body"(バー小体, バール小体)と呼ばれることもあります。

頭の大きさは大体直径1.5 μm程度です。

これがあると"女性"の可能性が高いとされます。



女性の性染色体はXX、男性はXYであることは有名ですよね。

X染色体はY染色体よりもかなり大きいです。

女性のその2本のX染色体で、活性化されていない部分の残り香が"ドラムスティック"内に濃縮されていると言われています。


ただし前述のように、女性でも過半数以上では出現しないため『この"ドラムスティック"が無いから"男性"である!』と断定はできません。

また男性においても、特にY染色体が長い人では"ドラムスティック"に似た"偽性ドラムスティック"と呼ばれる突起状の核分葉が認められることもあります。

この割合としては男性の0.5%以下で、先の"ドラムスティック"に比べるとやや小ぶりであり、"小さなゴルフクラブ"と表現されます。


結局のところ、この"ドラムスティック"所見だけで判断するのではなく、性別に関する他の所見も含めて判断する必要はあります。


今回は一部の女性の白血球(好中球)に認められる核の分葉所見"ドラムスティック"でした。

現代ではDNA型判定で簡単かつ高感度に性別を判定することができます。(参考記事:「DNA性別鑑定」)

ですので、この"ドラムスティック白血球"の性別判定における意義は乏しくなってしまっているのかも知れません。


ただ、こういった細胞レベルでも見た目に性差があるのって興味深いですよね。

この"ドラムスティック"には遺伝情報だけでなくロマンが詰まっています。