【法医学にまつわるバイト】
これは本当にあるのか?
こんなご質問を以前に頂いたことがあります。
「法医学者が(生計のために)やるアルバイト」
ではなく、
「(主に)医学生が法医学教室から雇われてやるアルバイト」
みたいなやつです。
よくドラマのイケメン君が法医学教室に出入りする名目で描かれますよね。
今回はこの"アルバイト"をテーマに書いていきましょう。
結論から言うと、、、そんな「学生アルバイト」はありません。
『法医学には高い責任性が伴う』からです。
我々法医学者は仕事柄、外部に漏らしてはいけない捜査情報等もたくさん見聞きします。
当然テレビのニュースになるような事件に関わるご遺体も法医学教室へやってきます。
それ以外にもご遺体に関するプライベートな個人情報など、多くのプライバシー情報も知り得ます。
そのような高度でデリケートな法医学という領域に、いくら在学する医学生であったとしても、易々と出入りさせるわけにはいきません。
まして「お給料をお出しして...」なんてのもあり得ません。(予算も厳しいのに、、、)
教授のポケットマネーならまだしも、教室のお金は大学に厳しく管理されていますしね。
在学生ですらそのような扱いなので、赤の他人なんてもっとあり得ないです。
どうしても人手が要るなら、それはもう正式に"職員募集"という形をとって、きちんと契約書・誓約書を書いて雇うことになります。
確かに、勉強のために解剖等を見学してもらったり教室に出入りして実験してもらうことはあります。
ただこれもごく限られた期間「在学する医学生さん向けに」ですね。
法医学者の三大責務の一つである"教育"の一環としてです。(参考記事:「三大責務」)
それであっても、解剖に関しては事件性が高いようなケースはうちでは控えてもらっていますが。
また「勉強のため」とは言え、うちの大学では在学生(医学生)以外の方の見学希望は原則断っています。
理由は前述の通りですね。
何故このような誤解が生まれたのかは分かりません。。
考えたら誰でも分かるとは思うのですが...。
ドラマ的に言えば「そういう設定にでもしないと若手俳優を起用できないから」みたいなのが妥当なところでしょうか笑。
ちなみに、似たような話として『死体洗いのアルバイト』もこの世には存在しません。(参考Wikipedia:「死体洗いのアルバイト」)
ご遺体の扱いは厳しく法律で定められていますし、ホルマリン自体の扱いも厳密に管理されてますからね。
そんなことがあれば医学教育全体を巻き込む大問題ですよ。
法医学のように、一般の方にはあまり知られていないような狭い業界はあらぬ誤解を招いてしまっていることがしばしばあります。
そのような誤解についても、今後このブログを通して解いていければなと思いますね!