口唇紋・掌紋・足紋

以前、個人特定に使用される方法として"指紋法"の記事を書きました。(参考記事:「指紋法」)

指紋は「指先にある紋様」のことでした。

"終生不変・万人不同"を特徴とし、現代でも有用なツールとして現場で使用されています。


しかし、人体の中で紋様があるのは指先だけなのでしょうか?

答えは否です。

身体には他にも特有な紋様を持つ部位が多数あります。

具体的に『くちびる・手のひら・足』です。


今回はこれら3つの"紋"について触れていきたいと思います。



上記に挙げた紋様のことをそれぞれ以下のように呼びます。

くちびるの紋様:【口唇紋】
手のひらの紋様:【掌紋】
足の紋様:【足紋】


これらの部位に特有の紋様があることは皆さんにも何となくイメージできるかと思います。

しかし、ただ"違いがある"というだけでは個人の特定には使えません。

その違いを分類・タイプ分けした上で比べることがとても重要です。


それぞれ個別にみていきましょう。



【口唇紋】[lip print]


"口唇紋"はもしかすると上記3つの中では1番馴染みがないかも知れません。

手のひらや足の紋様とは違い自分で見ることができませんからね。


鏡で自分のくちびるを観察したりキスマークを考えると、くちびるにも人それぞれの紋様があることに気付くと思います。

気になる方はGoogle画像検索で [lip print] と検索してみてください。


"口唇紋"は5タイプ6種類に分けられます。

①直線型(全体的)
lip1.jpg

②直線型(部分的)
lip2.jpg

③枝分かれ型
lip3.jpg

④交差型
lip4.jpg

⑤網目型
lip5.jpg

⑥その他
lip6.jpg


これらのタイプは画像のように1人のくちびるに一様なわけではないです。

同じくちびるでも各部位で様々なタイプを呈していることもあります。

ですので、くちびる全体を区分したり、特定の一部位を決めてた上でタイプ分けするようですね。


ちなみにこの分類法は日本人によって初めて提唱されました。

東京歯科大学の法歯学者であった鈴木和男先生・土橋康男先生です。

そういう意味でも大変意義深いものと思いますね。



【掌紋】[palm print]


[しょうもん]と呼びます。

これにも様々な分類法があります。

私が知っている分類法について書きたいところですが、文章だけでは若干説明がややこしいので本当に要点だけ、、、


①母指を除く4指の付け根にある三叉紋様 (主線・指三叉線)
②掌の手首側にある三叉紋様 (腕三叉線)
③小指球の紋様 (小指球紋)
④母指球の紋様 (母指球紋)
⑤各指間の紋様 (指間紋)

これら5種類の紋様について、

①②:"紋様の位置"や"紋様を形作る線の終端の位置"で分類
③〜⑤:出ている紋様自体を分類

こうやって型に当てはめていきます。

気になる方は是非成書を読んでいただきたいですね。



【足紋】[sole print]


これは足底部の紋様、いわば"足の指紋"ですね。(靴の紋様ではなく素足の紋様です)

"足紋"もざっくりとしか書きませんが、、、

①母指球紋:母指球の紋様。
sole1.jpg

②指間紋:第2-5指間の指間紋。
sole2.jpg

③三叉紋:中央やや上にある三叉紋様。※下画像参照
sole3.jpg

④小指球紋(腓側紋):小指球・腓骨側にある紋様。
sole4.jpg

⑤踵紋様:踵部分の紋様。
sole5.jpg


これらを分類し、その組み合わせをみていきます。



ということで、以上指紋以外の3つの"紋"を見てきました。

どれも指紋のようにタイプ分けして、それらを対象と比較することで個人を特定していくわけですね。


ただ近年はDNA型判定による個人特定の頻度が高いです。

現場試料としてもやはり物を触る手から残る指紋がメインと言えるでしょう。

そのため、これら3つの"紋"の活躍の場が減ってきているというのが正直なところだと思います。


しかし、場合によってはこういった知識が求められることもありますし、知っていて損はないでしょう。

こういった紋様の分類を考えてきた先人達は本当に素晴らしいと改めて感じますね。