爆発損傷・爆傷

今回は"爆発による外傷"について書いていきます。

"爆発損傷"や"爆傷"は、工場や鉱山によで起こり得る災害です。

救急医学では"CBRNE災害"(シーバーン)のひとつとして挙げられます。

化学:Chemical
生物:Biological
放射性物質:Radiological
核:Nuclear
【爆発物】:Explosive

特殊なケースではありますが、その規模や被害の大きさは重大ですので、今回取り上げます。



『爆発損傷・爆傷』:爆発による損傷。

これは改めて書くまでもなく常識的な内容ですよね。

それでは『実際に爆発の何が死に至らしめるか?』は皆さん知っているでしょうか。


ざっくりと爆傷には以下の4つの分類があります。

"1次爆傷":爆発の衝撃波や爆風による直接的損傷。
"2次爆傷":飛来物や飛んできた爆弾の破片による損傷。(主に穿通性外傷)
"3次爆傷":衝撃波で直接被害者が吹き飛ばされることによる外傷。(主に鈍的外傷)
"4次爆傷":1〜3次爆傷を除くすべての外傷や疾病。


具体的な因子でみてみると以下の4つになります。

①爆風による圧損傷。
②爆発物の飛来による損傷。
③高熱による熱傷。
④光による障害。(※致死的なことは殆どない)


詳しくみていきましょう。



①「爆風による圧損傷」(1次爆傷)


"爆発に伴う圧力による外傷"です。

爆発すると爆風・爆圧・衝撃波が発生するわけですが、それが外気と通ずる身体の部分に作用します。(その他"爆音"の作用などもあります)

具体的には、気管・肺や耳・鼓膜、腸管などが圧力によって破裂します。

肋骨骨折はないのに気胸や血胸、肺胞破裂・肺胞内出血が起こっていることもあるのは特徴です。

その他、眼底出血や眼球破裂も起こることがあります。

また爆風に突き飛ばされることで打撲を負うこともあります。(3次爆傷)



②「爆発による飛来物による損傷」(2次爆傷)


爆発によって飛んできた物体と接触することで起こる損傷です。

例えば釘爆弾や手榴弾では、そもそも爆発によって金属等(釘や金属片)を飛ばし受傷させることを目的としたものです。

広く考えようによっては、"ピストル・拳銃"も爆発(火薬の爆発エネルギー)による損傷の一種と言えるかも知れません。(参考記事:「銃器損傷」)

他にも、爆発によって割れた無数のガラスなどが身体に刺さる所見は"破片効果"とも呼ばれるそうです。



③「高熱による熱傷」(4次爆傷)


爆発によって発生する熱が作用します。

焼夷弾のように「爆発に伴う直接的な火炎による熱傷」や、その火炎が建物などに燃え移り「二次火災によって受傷した熱傷」なども含まれます。



④「光による障害」(4次爆傷)


いわゆる"閃光弾"や"スタングレネード"と呼ばれるもののような"光による損傷"です。

こちらは致死的なことは殆どありません。



以上、大きく4パターンです。

この他にも、爆発燃焼による低酸素や有毒ガス(COなど)による4次爆傷、近年では放射性物質による放射線障害なども"死に繋がる爆傷"の一つとして挙げられるかも知れません。


やはり爆発損傷のメインは①〜③になります。

ただし爆発エネルギーというのはかなり大きいため、そのような損傷自体が判断できない損傷が激しい場合もあります。

こういった"爆死"のケースでは即死であることも多く、その場合は生活反応に乏しいことも少なくありません。(参考記事:「生活反応」)

また複数被害者がいる場合では、それぞれ飛散した身体の個人特定を行うのに苦労することもあります。(※この場合はDNA型などを使用して身元を確認することになります)

周囲の様子や火薬の種類・量、場所の特性なども考えながら状況を考えなければなりません。


"爆発損傷"は極めて稀ではありますが、知識として知っていても損はないと思います。