今回は首吊りの際などに認められることのある"アミュサ徴候"[Amussat's sign]について取り上げます。
首吊りの解剖所見としては、他に"シモンの出血"というものがありました。(参考記事:「シモンの出血」)
"シモンの出血"とは『首吊りの際の重力効果によって椎間板の前方に出血を来す』というものでしたね。
"アミュサ徴候"はこの"シモンの出血"に若干通ずるものがある気が私はしています。
【アミュサ徴候】[Amussat's sign]:縊頚の症例などで認められる総頚動脈内膜の水平・平行な裂傷のこと。
名前はフランスの外科医であったアミュサ先生が由来となっています。
【アミュサ徴候】
これは首吊りの場合などに認められる所見です。
『総頚動脈の内側の壁に横方向の亀裂が入る』というのが典型例です。
血管の内側の所見なので、この"アミュサ徴候"は解剖をしなければ分かりませんね。
この裂傷が出来る機序は、首吊りの際の「重力効果による垂直下向きの力」や「ロープによる直接的な外力」によるものと言われています。
もっと単純に言うなら『血管が引き延ばされて裂けた』といったところでしょうか。
この「引き延ばされる」という点が少し"シモンの出血"に似ている気が私はするのですがいかがですかね。
ただし「"アミュサ徴候"があるから確実に首吊り」と断言できるものではありません。
前述の"ロープによる力"というなら首締めでも出来得るわけですし、その他にも"頚部への鈍的外傷"や"("鞭打ち"を含む)頚部の過伸展"でも発生すると言われます。
ですので、「首吊りでも認められることがある」というくらいの認識が正しいと私は思います。
今回の"アミュサ徴候"にしかり、"シモンの出血"にしかり、縊頚にまつわる所見は割とあります。
法医学において、縊頚・首吊りなどの頚部圧迫はそれだけ重要なテーマということの現れかも知れませんね。