今回は"遺体の引き取り人"のお話をします。
人が亡くなった際、必ず必要になるものがあります。
それが"引き取り人"です。
『(遺体)引き取り人』:解剖後にご遺体を引き取り、責任を持ってその後の手続きをする人。原則親族が該当する。
私自身法律に詳しくないのですが、この"引き取り人"と"相続人"とは必ずしも同じ意味ではなく、「遺体引き取り拒否」と「相続放棄」とは別次元の話だそうです。
この点に関して、詳しくは法律家に聞いてください。
それでは、"遺体引き取り人"についてみていきましょう。
ご遺体は自分自身で後始末ができません。
ですので、死後の手続きを行ってくれる"引き取り人"が必要になります。
この"引き取り人"が必要になるのは法医解剖においても同じです。
警察は解剖に関する手続きはしてくれますが、それ以外はしてくれません。
引き取り人が責任を持って対応します。
引き取り人となるのは基本的に配偶者・親子兄弟を含めた親族です。
明確な数字は分かりませんが、私が解剖を通して出会うご遺体の引き取り人は大抵配偶者・親子兄弟で、稀に親戚な印象です。
法医解剖にやって来るご遺体は、突然死や変死であることが多いです。
そのため、事前に決まっているのではなく、解剖の話をする際に警察等から遺族へご遺体引き取りの確認があり、引き取り人が決まっているようです。
しかし、法医解剖にやって来るご遺体は孤独死・孤立死するご遺体や、親族と疎遠な方も多いです。
なので、皆さんがおそらく思っている以上に『遺体引き取り人がいない』というご遺体がいらっしゃいます。
引き取りは"拒否"も可能です。
故人との血縁関係があったとしても、該当する親族が全員拒否すれば「ご遺体の引き取り人は"なし"」となります。
ただ、この場合でも役所が責任を持ってその後の手続きを進めてくれます。(参考記事:「行旅死亡人」)
法医学教室にご遺体がやってくる時点で既に引き取り人は決まっています。
従って、法医学者は直接引き取り人決定には関わりません。
警察の方が引き取り人を頑張って探してくれます。
それでも、引き取り人を見つけるのに苦労したり、結局決まらないということもしばしばあるみたいです。
前述のように『(親族はいるけど)疎遠や関係悪化から遺体引き取りは拒否する』という親族も結構いらっしゃるようで...。
「今後こういうケースが増えてくるのだろうか?」と勝手に思っています。
死というのは突然やってきて、特に我々法医学者が出会うご遺体はそういうケースも多いです。
だからこそ、ご遺族もいろいろな負担や事情があるのだと思うんですよね。
しかし、人間関係のことはその当事者にしか分かりません。
法医学者にできるのは、きちんと誠意を持って死因を究明し、対応するだけですね。
『たとえどんな事情があろうと、(法医学者として)厚く丁重に弔ってあげたい』
毎回そう思います。