今回は銃創の稀な所見の一つである"鍵穴銃創"について書いていきます。
銃創自体については参考記事をご参照ください。
銃器損傷①:射創の種類
銃器損傷②:射創の距離
銃器損傷③:射創の向き
この"鍵穴銃創"は、弾道を推定する際に有用な所見です。
日本では銃創をあまり見ることがないので馴染みがないですが、海外のテキストを読んでみると書いてあったりしますね。
大変興味深い所見ですので、取り上げます。
鍵穴銃創 [keyhole gunshot wound]:鍵穴様の銃創。"鍵穴"の上から下向きへの弾道が推定される。
"鍵穴"とは↓のような図形を指します。
詳しくみていきましょう。
文章で説明するよりも、画像をみた方が理解しやすいと思います。
"鍵穴銃創"は頭蓋骨などの曲面を持つ骨に対して、弾丸が接線方向に浅く接触した場合にできる骨傷所見です。
特に鍵穴のお尻?の部分は、骨の外壁が弾丸で剥がされるこによって薄くなっていることも多いです。
鍵穴の頭?の部分からお尻?の部分に向かう弾道が推定されるわけです。
「なぜこのような所見になるか?」に対する説明はむしろ物理学者の方が詳しく説明できるのかも知れないですね。
"Krönlein shot"もそうですが、"鍵穴銃創"も銃創の中では稀な所見です。(参考記事:「クレンラインショット」)
従って「このような射撃を受けたら必ず認められる」というものではなく、「"鍵穴銃創"が認められたら弾道が推定できることがある」ということですね。
海外のテキストは銃創の記載が本当に豊富ですね。
「法医学が"社会"医学であること」を改めて実感します。