第108回医師国家試験 B問題 問24 [108B24]

高齢者が自室内で心肺停止状態で発見された.
外因死を最も強く示唆するのはどれか.

a 吐血
b 尿失禁
c 瞳孔不同
d 角膜混濁
e 鮮紅色の死斑




正答は【e】です。


[a] 誤り。"吐血"は基本的に消化管出血を示唆する所見です。確かに外因性損傷でも消化管出血は当然起きますが、それだけでなく、内因性疾患(eg. 胃潰瘍、食道静脈瘤破裂、マロリーワイス症候群...)でも認める所見です。従って、この所見だけで"外因死"とは必ずしも言えません。

[b] 誤り。"尿失禁"は窒息死や薬物中毒で認められることが多いとされますが、その他にも脳出血や急死などの死戦期に広く認められることもあり、特異度は決して高くありません。

[c] 誤り。"瞳孔不同"は頭蓋内圧亢進症状(eg. 脳出血、脳浮腫、脳腫瘍...)で認められることがあります。ただし、「頭蓋内が亢進していそう」というのと「外因死かどうか?」というのは次元の違うお話です。つまり、頭蓋内圧亢進は、外傷性病変で起きることもああれば、内因性病変で起こることもあるということです。

[d] 誤り。"角膜混濁"は死体現象の1つです。この所見を以て「内因死である or 外因死である」の議論はできません。

[e] 正しい。"鮮紅色の死斑"は国試では主にCO中毒のご遺体に認められる所見とされますが、"青酸中毒"や"凍死(低体温症死)"でも認められることはあります。ただ、これら死因はどれも外因死に分類されるので、選択肢の中では最も強く外因死を示唆する所見と言えます。



"外因死を示唆する所見"に関する問題です。

今までの問題に比べ、趣向がやや違っていて興味深いですね。


[a][b][c]はどれも、確かに「"外因死"でも認められることがある所見」です。

ただし同時に「"内因死"でも認められることがある所見」とも言えます。

その点、[e]鮮紅色の死斑は、他と比べて「外因死で認められることが比較的多い」と言えるので正答なのですね。


もちろん細かなことを言えば、死後でも低温環境に置かれていれば、死因が別であったとしても、鮮紅色の死斑を呈することがあるため、

そうなってくると、「"外因死"を示す」とは必ずしも断言できません。(参考記事:「低体温症」)

だからこそ、問題文も「最も強く示唆する〜」という書き方をしているのでしょう。

受験生もその意味合いをきちんと理解し、この問題が荒れることはなかったようです。



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