第107回医師国家試験 G問題 問20 [107G20]

107G20
死後経過時間の推定に用いられるのはどれか.

a 溢血点
b 血液凝固
c 瘢痕収縮
d 直腸内温度
e 膀胱内尿量




正答は【d】です。

[a] 誤り。"溢血点"は死後経過時間の推定には使えません。絞頚や非定型的縊頚、急死などで溢血点を認めることが多いです。

[b] 誤り。[a]の"溢血点"と同様、血液凝固は"急死の3徴"の1つです。ですので、"死亡までの時間"の推定には使えるかも知れませんが、"死亡してからの時間"の推定には使えません。

[c] 誤り。"瘢痕収縮"とは、いわゆる"傷跡"のことです。比較的時間の経ったキズであるため、"受傷時期"の推定に使える可能性はありますが、"死後経過時間"の推定には用いません。

[d] 正しい。"直腸内温度"は死後経過時間の推定法の中の王道です。(→正確という意味ではない) 1時間あたりおよそ0.8℃ずつ体温は低下していくので、そこから逆算していきます。

[e] 誤り。膀胱内尿量は、排尿後の経過時間の推定に用いられることはあります。ただし、あくまで「排尿後からどれくらいの時間が経ったか?」という情報に過ぎず、死後経過時間の推定はできません。



死後経過時間の推定に用いられる法医学所見に関する問題です。(類似問題:93A44, 96G75)

法医学において基礎的な知識ですので、殆どの受験生が正解できたかと思います。


最後の選択肢である[e]膀胱内尿量は、解説の通り、法医学的には"排尿後経過時間"の推定に用いられることが極々稀にあります。

例えば、寝る前に排尿する習慣がある人が、朝に亡くなっているのを発見され、膀胱内が殆ど空だったら、、、「就寝直前後に亡くなったのかな?」みたいな感じですね。


しかし、実際は膀胱の蓄尿ペースなんて状況によって様々なわけです。

寝る前にありったけの水分を摂取すれば、就寝後短時間であっても膀胱が尿でパンパンになることだってあります。

逆に、寝る前に殆ど水分を摂らず脱水状態だったら、朝に起きても殆ど尿が貯まっていないことだって日常的にざらにありますよね。

そして、そもそも「その最終排尿時刻はいつだ?」というのが分からないことの方が大半です。

それが分かったとしても、前述のように"水分摂取状況"は不明だったりするので、結局法医学的な意義はそんなに深くないと個人的には思っています。

都合よく物事が進むのはドラマの中だけということですね。



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