112C49
中年の男性.道路で血を流して倒れているところを通行人に発見された.救急隊到着時には心肺停止状態で,病院に搬送されたが死亡が確認された.背部から出血があり,血液を拭き取ったところ確認された創の写真を次に示す.
死亡を確認した医師が,まず行うべきなのはどれか.
a 創を縫合する.
b 警察署に届け出る.
c 病理解剖を依頼する.
d 死亡診断書を交付する.
e 死体検案書を交付する.
正答は【b】です。
[a] 誤り。後述の通り、今回の事例は"異状死体"として届け出るべき事例と考えられます。その場合は、できる限り遺体には手を加えず、そのままの状態で保存しておかなければなりません。死亡が確認されており、救命の可能性がない以上、創の縫合はできるだけ避けるべきです。
[b] 正しい。本事例には背部に刺創があり「確実に診断された内因性疾患で死亡したことが明らかである死体以外の全ての死体」に該当します。このため、医師法第21条に基づく"異状死体の届出"を24時間以内に所轄警察署へ行う必要があります。
[c] 誤り。"病理解剖"は原則として"異状なし"と判断出された院内死亡したご遺体に対して行われます。[b]の解説の通り、本事例は"異状あり"として異状死体の届出を行うべき事例であるため、病理解剖は不適と思われます。
[d] 誤り。本事例は「自らの診療管理下にある患者が、生前に診療していた傷病に関連して死亡したと認める場合」には該当しません。ですので、"死亡診断書の交付"は不適です。
[e] 誤り。[d]の解説の通り、確かに本事例は"最終的に"は死体検案書が交付されるケースです。しかし、死亡を確認し、異状を認めた直後には、"まず"異状死体の届出を行うべきです。
「死亡確認後に"異状"を認めた場合の対応」を問うた問題ですね。
画像問題ではありますが、画像自体は問題に直接的には影響しません。(→画像が無くても問題は成立する)
正答の対応に関しても常識的で難しくないです。
あえて引っかかるとすれば、選択肢[e]だと思いますが、解説の通り"まずは"異状死体の届出ですね。
もちろん最終的には「死体検案書の交付」で合っていますよ。
ちなみに、今回の問題に掲載された"刺創"について別記事で詳しく考察しています。
興味がある方は→【刺創の見方】へ!