今回のテーマは"法花粉学"です。
皆さんは"法花粉学"という言葉を知っているでしょうか?
実は私自身も海外の教科書を読むまでその存在を知りませんでした...。
しかし、英語版ウィキペディアにも載っているような由緒正しい?学問なんですよ!(参考Wiki:Forensic Palynology)
"法昆虫学"とも似ているようで似ていないような...。(※参考記事:「法昆虫学・法医昆虫学」)
むしろ溺死の際の"プランクトン検査"に通ずるものがあると私は思います。(参考記事:「プランクトン検査」)
法花粉学・法医花粉学 [Forensic Palynology]:花粉や胞子を調べることによって、法的な問題を解決しようとする学問。
詳しくみていきましょう。
この"法花粉学"において対象となる試料は"花粉"や"胞子"です。("胞子"はキノコやコケ、シダなど)
花粉は植物それぞれによって形も違い、当然中にはDNAが含まれておりそれも違います。
それでいて、細胞壁によって守られているので安定性も高いんですよね。
化石として何万年も花粉が残っていることもあるそうです。
そんな"花粉"を調べることでまず植物種を特定します。
そして、花粉を発する植物には気候や地域性がありますので、植物種から花粉が付着した場所や時期を推定していくといった流れです。
昆虫とは違い、花粉自体は動きません。
しかし、動物の皮膚や人の衣服に付着し、風や水によっても移動します。
そのために解釈が難しいとも言えますが、逆にそれを紐解くことができれば、花粉は有用なツールになり得るわけですね。
つまり、例えばご遺体に付着した花粉を調べることで、元々はどこにあったのか?というのを知ることができる可能性があるわけですね。
花粉は鼻腔にも付着し得ますから、そこから花粉を採取して死亡場所を特定する...なんてドラマのようなことができるかも知れません。(死後に鼻腔内へ花粉が入るとは考えにく いですし)
またご遺体だけではなく、例えば偽造輸入品に付着する花粉を調べることで産地を調べるなんてこともできそうです。
この"法花粉学"は、イギリスやニュージーランドで特に進んでいるようです。
一方、日本では残念ながらまだまだ一般的ではありません。
日本は四季がありますので、それこそこの"法花粉学"が大いに活躍する可能性を秘めている気は個人的にするんですけどね。
そもそも
・どの季節に
・どの植物が
・どのような花粉を
・どこに付くか?
などの植物学・花粉学的な要素も含め、法医学的な問題をクリアしなければ実用化にはなかなか難しいとは思います。
逆に四季があることで複雑になってしまっているのかも知れません。
"法花粉学"...大変興味深いですよね。
まだまだ一般的ではありませんが、いつか日本でも有用な法医学ツールとして使われるようになれば良いなと人並みに思ったりします。
果たして日本の法医学(法科学)の業界に"法花粉学者"は現れるのでしょうか。
今後に期待したいところです。