近年では"肺炎"という死因をよく耳にするようになりました。
数年前に国試受験生だった方の中には『"肺炎"が日本の死因の3位になった!』と勉強した人もいるのではないでしょうか。
そして、その際「これは高齢者の"誤嚥性肺炎"が増えたからである」と学んだはずです。
それでは、最近ではその統計がどうなっているか知っていますか?
ということで、今回は【最近の死因統計における"肺炎・誤嚥性肺炎"】についてみていきたいと思います。
もう初めから結論となる死因毎の死亡率(10万人対)のグラフをみてもらいます。
↑こうなっています。
※見やすくするため、グラフでは"悪性新生物"と"心疾患"を除いています
若干太くなっているのが、"肺炎"と"誤嚥性肺炎"ですが、、、そうなんです。
"肺炎"はもう死因順位の3位でありません。
その理由は、2017年(平成29年)から"誤嚥性肺炎"が"肺炎"から項目として独立したためです。
「"肺炎"の中に含まれていた"誤嚥性肺炎"が別項目として独立すれば、"肺炎"の数は減る」
このこと自体は、当たり前といえば当たり前な現象ですよね。
しかし、重要なのはそこではありません。
もっと重要なのは『死亡診断書・死体検案書を記載する医師が「"肺炎"と"誤嚥性肺炎"は別の死因である」として、適切に区別し記載しているのか?』という点なのです。
もっと具体的に書くと、
『"誤嚥性肺炎"が念頭にあるのに、死因に"肺炎"と書いていませんか?』
ということです。
もし、本当は"誤嚥性肺炎"と診断しているのに、死亡診断書に"肺炎"と書いてしまうと、当然("誤嚥性肺炎"ではなく)通常の"肺炎"として計上されてしまいます。
そうなると、統計上、本来の"誤嚥性肺炎"が全体として過小評価されてしまうわけです。
ですので、医師はきちんとした認識の上で死因を記載する必要があるのです。
「通常の"肺炎"か?」「"誤嚥性肺炎"か?」というのは簡単でないことも多々あります。
臨床経過や患者さんの背景を知らないとなかなか自信を持って書けるものでもありません。
またもっと言うと、直接死因が"誤嚥性肺炎"なら「その"誤嚥"(≒嚥下機能低下)は何故起きたのか?」まで本来は考える必要があります。
それくらい死因の判断は難しいのです。
このように、"死因統計"というのは「書類を作成する医師全員が適切な認識の上で死亡診断書・死体検案書を作成する」というのが大前提です。
その前提が崩れてしまうと、死因統計は信頼性の乏しいデータとなってしまいます。
死因統計の問題点については過去にも取り上げています。
是非興味のある方は↓を一読して考えてみてほしいです。
参考記事①:「死因統計の問題点」
参考記事②:「老衰とは何なのか?」