恥骨結合面の状態による年齢推定

年齢推定の方法には様々あります。

・歯の咬耗度 (参考記事①)
・歯髄腔の狭窄度 (参考記事②)
・頭蓋骨縫合の癒合状態 (参考記事③)

上記は主に頭蓋骨に関係する所見から推定する方法でした。

今回ご紹介する方法は"骨盤"の所見です。

具体的には骨盤を構成する骨の中の"恥骨の結合面"をみます。

早速見ていきましょう。



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恥骨結合:靱帯によって左右恥骨が結合している部分。

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恥骨結合面:恥骨が向き合って結合している面。表面は薄い硝子軟骨で覆われている。

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詳しくみていきます。



恥骨結合面での年齢推定では、いろいろな所見を観察しますが、今回は主要3ヶ所を挙げます。

・平行隆線
・上結節
・境界縁(腹側縁・背側縁)

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これらの所見が年齢によって違ってくるわけですね。

【平行隆線】:前後方向に走る隆線。〜20歳前後まで認め、20代半ばで消失していく。
【上結節】:20代半ばに出現し、30歳前後で消失する。
【腹側縁・背側縁】:20歳代後半から恥骨結合面の下部に目立ってくる境界縁。以後の年齢では保持される。


上記の年齢推定表はあくまでも目安です。

この"恥骨結合面を用いた年齢推定"は、30歳後半以降の骨変化に関しては個人差が大きいとされています。

従って、壮年以降の年齢推定には注意が必要です。

そのため"恥骨結合面"ではなく、『比較的高齢まで客観的に変化が観察でき、保存状態も良好な場合の多い"腸骨耳状面"を観察すべきである』とも言われます。(※今回は省略)

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以上、今回は"恥骨結合面の状態による年齢推定"を取り上げました。

骨を用いたどの方法も、高齢になってくると判断に困ることも少なくありません。

元気な高齢者が増えた今日、その傾向は今後より一層強くなっていくのかも知れませんね。


これまで紹介してきた"頭蓋骨"や"恥骨"といった骨は比較的性差も出やすい骨です。(参考記事:「骨の性差」)

また虐待関連では、陳旧性骨折の所見は法医学者にとって見逃してはならない所見でもあります。

死後CT検査の実施も増えてきて、今後も新たな知見が多く出てくることでしょう。

骨所見は、法医学では切っても切れない重要な所見ばかりです。

骨を...侮るなかれ!