第115回医師国家試験 C問題 問38 [115C38]

115C38
75歳の男性.慢性C型肝炎による肝硬変,食道静脈瘤の存在が指摘されていたが,高血圧症と脂質異常症とともに特に治療は受けていなかった.吐血し意識を失った状態で倒れているところを家族が発見した.搬送先の病院で内視鏡的食道静脈瘤結紮術を施行したが止血に至らず,死亡した.
この患者において死亡診断書のAに記入すべき疾患はどれか.

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a 肝硬変
b 高血圧症
c 脂質異常症
d 食道静脈瘤
e 慢性C型肝炎




正答は【d】です。


[a][b][c][e] 誤り。
[d] 正しい。直接死因である"出血性ショック"の原因は"食道静脈瘤(の破裂)"と考えられるので、(イ)欄には"食道静脈瘤"と記載するのが適切と思われます。


"死因の書き方"に関する問題です。

以前に出題された問題が"直接死因"を問うものでした。(参考問題:112B19)

今回は直接死因の下の欄、(イ)欄を問う問題になっていますね。

とは言え、正答率を見るとこれも殆どの受験生が正解できたようです。


死因欄は、直接死に関係する傷病名を1番に上に書き、その原因をどんどん下の欄に連ねて書くようになっています。

今回の事例で言えば、最終的に、

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多くの医師がこういった書き方になると思います。


"出血性ショック"の原因は"食道静脈瘤"

"食道静脈瘤"の原因は"肝硬変"

"肝硬変"の原因は"慢性C型肝炎"

問題文には、"慢性C型肝炎"の原因は記載されていないのでこれで終わりになります。

また医師の判断によっては、"高血圧症"を「Ⅰ欄の傷病の経過に影響を及ぼした傷病名」として記載するかも知れませんね。


死因統計の基礎データの基礎となるのは原則としてⅠ欄の1番下にある傷病名(=原死因)です。

1番下の傷病名が不適な場合は、その上の傷病名になることもあります。

こういった統計ルールがあるため、単に広い疾患概念を持つ傷病名を1つだけ死因欄に載せるより、できるだけ細かく・詳細に傷病名を連ねて記載すべきべきだと私は思っています。


このように、本来統計としては好ましくないですが、死因の書き方にも実は医師の個性が出てしまいかねないのです...。(参考記事:「死因統計の問題点」)



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