116F39
66歳の男性.自宅アパートから出火し,焼け跡から死体で発見された.死因等の特定のために司法解剖された.
剖検時の所見でこの男性が火災発生時に生存していたことを示すのはどれか.
a 頭蓋内の燃焼血腫
b 頸部皮膚のⅢ度熱傷
c 気管内の煤付着
d 肘関節屈筋の熱収縮
e 背部の死斑
正答は【c】です。
【生活反応】=傷害発生時に生存していたことを示す所見。(参考記事:「生活反応」)
[a] 誤り(=生活反応でない)。燃焼血腫は死後の熱傷でも発生するため、生活反応でありません。
[b] 誤り(=生活反応でない)。熱傷のうち、生活反応はⅠ度(ないしⅡ度)の熱傷であり、Ⅲ度・Ⅳ度の熱傷は死後の火災でも発生し得るため生活反応ではありません。
[c] 正しい(=生活反応である)。気管内に煤が付着するには、呼吸運動によって生前に煤を吸い込む必要があります。従って、気管内の煤付着は"生活反応"と言えます。
[d] 誤り(=生活反応でない)。肘関節屈筋の熱収縮は、いわゆる""拳闘家姿勢/ボクサー姿勢"を指しています。この熱収縮は死後火災遭っても起き得ます。このため"生活反応"ではありません。
[e] 誤り(=生活反応でない)。背部の死斑は、単なる死後変化です。死後に起きる変化なので、"生活反応"ではありません。これを以て生前・死後を議論できません。
"生活反応"を聞いた良問です。
ですが、実は過去に類似問題が出題されているんですよね。(類似問題:96B24)
法医実務では、この"生活反応"をとても重視します。
特に本問題のように火災事例の場合は、別の原因で死亡後にご遺体が焼かれた、
もっと具体的に「他殺されその後に焼かれた」可能性などを検討するために重要なのです。
他のシチュエーションでも、この"生活反応"が裁判の中では決めてになることも少なくありません。
法医学者にとって、見逃してはいけない所見のひとつなのです。
ちなみに、実は以前この問題を既に解説していますので、より詳細な解説は→【こちらの記事】へ!