脳死・脳幹死、法的脳死判定

さて前回に続き『脳死』について書いていきたいと思います。これらを読んで"脳死"と"植物状態"の違い、そして"脳死判定"の詳細が理解できるようになれればと思います。簡単におさらいをしますと、植物状態は『脳幹機能が保たれており自発呼吸が認められる』でした。これに比べ、脳死では『脳幹の機能の含め全脳機能が(不可逆的・永久的に)障害されている状態』つまり人工呼吸器が必須となる状態ということでした。脳幹は呼
以前書いた記事の中に、『脳死と植物状態』にちらっと触れたものがありました。なので今回はその両者の違いについて記載していきたいと思います。ちなみにこのブログでも慣習的に"植物状態"と書いていきますが、正式には"遷延性意識障害"と言います。TPOに応じて"遷延性意識障害"という言葉を使用する方が適する場も多いかと思いますのでご留意ください。さて、まずそもそも両者は違います。ざっくりと書きますと、植物状

死亡診断書と死体検案書

今回のテーマは試験でも山場になるくらいメジャーなところですね。『死亡診断書と死体検案書の違い・使い分け』です。正直なところ、これに関しては厚生労働省からその名もズバリ『死亡診断書(死体検案書)記入マニュアル』というものが毎年発行されておりますので、それを読めば大抵のことは分かると思います。(※マニュアルのリンクはこちら)まずは死亡診断書・死体検案書の原本をお見せしたいと思います。こちらです。 同マ
今回は『ご遺体が発見されるとどういう流れになるのか?』というのを書いていきたいと思います。"病院等で亡くなった患者さん"に関しては、主治医やかかりつけ医が死亡診断書を作成した上で火葬へと向かいます。ですが、今回詳しく見ていくのは『それ以外のご遺体』の流れで、特に警察の視点からみた内容です。実際に運用している警察等の方々の方がきっと詳しいと思うので、もし何か間違いに気づいた関係者の方はこっそり教えて
さて、総論的な話が続きますが、そろそろ具体的な話も増やしていきたいと思っています。今回は『実際に法医学者になるためにはどうすればよいのか?』というのを、私の経験を元に書いていきたいと思います。例のごとくあくまで"個人の感想"に過ぎない点は重々理解した上でお読みください。まず『"法医学者"とはどういった人を指すのか?』というところだと思います。「法医学者=法医学+学者」ということですので、文字を素直
前回まで解剖の種類について書いてきました。(参考記事:解剖種類①、②、③)それでは、実際にそれら解剖を誰でも行って良いのか?という話が出てきます。答えは"否"です。条件をきちんとクリアしていなければ、その執刀者は"死体損壊罪"に問われることになります。それら条件は『死体解剖保存法』に書かれています。具体的に条件を見ていきましょう。ポイントとなるのは、・解剖目的・保健所長の許可 許可を得ない例外の場
解剖の種類、最終章は⑤『病理解剖』と⑥『系統解剖』、それと+αとして残りの『その他の解剖』をさらっと書いていきたいと思います。今回テーマの解剖は、我々法医学では基本的に扱わないものとなります。"病理解剖"は、主に病理医の先生が執刀される解剖です。病理(医)とは何だったか?を考えてみます。 (参考記事:「法医学とは何か」)この病理解剖の対象となるのは『病院で亡くなった患者さん』です。病理解剖の目的は
それでは③『行政解剖』から続けていきます。行政解剖は文字通り「行政機関による解剖」です。特にここでは『行政機関=監察医』ということになり、"監察医解剖"と呼ばれたりもします。"監察医"と聞きますと、昨今はドラマにもなっていたりして聞いたことがある人もいらっしゃるのではないでしょうか。行政解剖を語るにあたって"監察医制度"の説明は必須です。監察医制度とは『日本の一部地域でのみ導入されている公衆衛生を
一言で"解剖"と言っても複数種類のある解剖。今回は6つある【解剖の種類】について書いていきたいと思います。法医学と聞くと、おそらく多くの方が真っ先に"解剖"をイメージすることでしょう。ただその"解剖"関して、法医学では①司法解剖②調査法解剖③行政解剖④承諾解剖と実に4種類の解剖を扱っているんです。ちなみに、これらを4つを合わせて【法医解剖】と呼びます。長くなりそうなので、今回はひとまず①司法解剖と

死とは何か?

我々法医学がメインに扱っている【死】その【死】とはどういう状態のことをいうのでしょうか?皆さんはこれに答えられますか?今回は『死とは何か?』が理解できることを目的としています。正直なところ、死の定義には様々なものが言われています。各教科書にはこう書かれています。『死とは、その個体としての生命活動が永久的に停止した状態である』(生物学的死)『肺・心臓・脳のうち、いずれか一つの永久的(不可逆的)機能停