前回"警察医"について書きました。その検案業務の中で、かつて行われていた『血中トロポニン・H-FABP検査』を今回はメインに書いていきたいと思います。結論から先に書きますと、死後トロポニン測定・H-FABP測定はともに法医学者の間では『有用でない』と判断されています。詳しくみていきます。前回書いたように『警察医が検案を行った上で、その場で死体検案書を書いて終わる』こともあります。しかし、実際にご遺
前回の記事で"警察医"や"検案医"、"トロポニン"という単語を何の説明もなく出してしまったので、今回・次回で少し解説していきたいと思います。大雑把に書いてしまいますと、警察医・検案医:『警察の依頼を受けてご遺体の検案を行う医師のこと』です。詳しくみていきましょう。"警察医"は"検案医"や"警察嘱託医"とも呼ばれます。『都道府県の警察署長などから嘱託され、変死体の検案の他、被留置者の診療や警察職員の
今回は法医学の現場で時々行われる"後頭窩穿刺"(=後頭下穿刺)について書きたいと思います。一般の方には馴染みのない言葉だとは思いますが、場合によっては検案の際にその場(ご遺体の発見場所等)で行われることもありますので、初めて見た人はびっくりするかも知れません。この記事を読んでこの"後頭窩穿刺"が何なのか?というのを理解できれば幸いです。この"後頭窩"とは、後頭部にある凹みの箇所のことを言います。そ
今回は"飢餓死・低栄養"について取り上げます。この疾患は大変ミゼラブルで、法医学者として数ある疾患の中でも一二を争うほど辛い解剖となります。その中でも「なぜ飢餓で死に至るのか?」を中心に書いていきたいと思います。豊かになった現代の日本において『法医学者が"飢餓死"に出会う機会なんてあるのか?』と問われると、『皆さんが思っている以上にある』というのが私の答えです。児童虐待から高齢者ネグレクト、末期癌
『法医学者不足』が叫ばれるようになって久しいですが、死因究明等推進基本法の成立・施行に伴い、国も『法医学者不足』に対して支援を始めました。しかし、まだまだ十分でないのが現状です。とは言え、その『"法医学者の現状"が具体的にはどうなのか?』という実際の数字はあまり見えてきません。今回はある論文を取り上げながらその具体的なデータをみていきたいと思います。引用元情報は下記の通りです。著者名:井奈波良一論
銃器・銃器損傷の最終回です。最後はもっと具体的な話をしましょう。前回は『射撃距離によって射創の性状が違う』というのを書きました。接射:皮膚に接着した状態からの射撃。爆発ガスの影響を強く受ける。近射:比較的近い距離からの射撃。火薬粒の影響を強く受ける。遠射:比較的遠い距離からの射撃。上記2つ(爆発ガス・火薬粒)の影響を受けない。簡単にはこんな感じでしたね。逆にこういった所見から、射撃された距離をざっ
引き続き銃器損傷について書いていきます。もう少しだけ用語が出てきますが、各論チックな内容も出てきますのでがんばってください...。前回射創の種類にはいろいろな名前が付いているのをご紹介しました。それに加え、ライフル銃・ピストル銃では、弾丸が撃たれた距離によってその射撃・発砲の呼び名が変わります。①接射:皮膚に接着した射撃。 ※目安として0〜10cm②近射:接射を除く、近距離からの射撃。 ※目安とし
今回は"銃器"についてです。銃器...つまり鉄砲のことです。この学問体系は日本よりもやはりアメリカをはじめとした海外で進んでいますね。日本では主に"猟銃による損傷"かもしくは"違法拳銃による損傷"がメインになってきます。決して多いわけではありませんが、それでも射創のあるご遺体はほぼ100%司法解剖になりますので、法医学者にとっては必須の知識となります。今回は、ドラマでは頻繁にお目にかかる"銃器・射
前回に引き続き少し雑談系な内容です。今回のテーマは"法医学者のバイト"と称して『法医学者のアルバイト事情』を私自身の経験も踏まえ書いていきたいと思います。法医学者としてお給料をもらうとすれば、大学の教員として採用される必要があります。ただこれに関しては前回もチラッと書きましたが、法医学教室が全国でも90校ほどしかないため、今現在決して潤沢な教員ポストがあるわけでもありません。またもし大学院生の間で
今回は少し雑談がてらな内容として、"法医学者としての行く先"を書いていきます。よく法医学とは関係ない友人に聞かれることとして、そもそも「法医学って何?」というのがあって、それはブログ開始当初に記事にしました。(※"法医学とは何か?")その次の段階、ある程度法医学を知っている友人に質問されるのが『法医学者って将来どういうキャリアなのか?』という話なんですよね。今回はそこを自分なりに書いてみたいと思い