プランクトン検査

今回は溺死の診断で用いられる"プランクトン検査"について書いていきます。海や川でご遺体が発見された際、重要になってくることがあります。『海・川で溺死して亡くなったのか?』『(別の死因で)亡くなってから海・川に落ちたのか?』これです。法医解剖となるケースは多くで入水時の目撃者はいません。どうすればいいでしょうか?考えてみてください。胃の中にたくさんの水を飲み込んでいれば溺死したと判断してよいでしょう

電撃傷 (感電死・落雷死)

今回は電気に関連した外傷である"電撃傷"について書いていきます。電撃傷によって亡くなった場合、その電撃が①人工電流であるか ②自然電流であるか によって呼び名が違います。①人工電流による死亡:感電死 (ex. コンセントや送電線からの電流)②自然電流による死亡:落雷死 (ex. 雷など)電気関係の労働災害や自殺の手法としてしばしば遭遇します。ちなみに①では直流電流より交流電流の方が危険と言われてい

法看護 (法医学と看護師)

法看護[フォレンジック看護]という言葉を知っているでしょうか?それに関連して、法医学における看護師 "フォレンジックナース"という職業があります。今回はこの"法看護"について書いていきたいと思います。法医学におけるコメディカル・パラメディカルと言えば、臨床検査技師や薬剤師のイメージが強いと思いますが、実は法医学においても看護師は活躍しています。それが"法看護"[forensic nursing]で

都道府県別の解剖率

"日本の解剖率"と"世界の解剖率"と来て、最後は"都道府県別の解剖率"です。前回の記事で①"全死亡者"比解剖率 ②"警察取扱死体比"(≒異状死体比)を取り上げましたが、これらの数字は『同じ国の中でも地域によって大きく違う』という話を書きました。日本国内でも地域によってまちまちなので、今回はそれを知ってもらえればと思います。厚生労働省のサイトに都道府県別の令和元年の解剖統計があったので、それに都道府

世界の解剖率

前回の記事"日本の解剖率"に引き続き、今回は"世界の解剖率"について書いていきたいと思います。果たして日本の解剖率は世界の解剖率に比べて本当に低いのか?これを見ていきましょう。前回書きましたが、解剖率には2種類あって分母が違います(①全死亡者 ②警察取扱死体)ので、その点も注意して記載していきます。警察庁からのデータ(2009年)がありましたので載せます。赤枠で囲んだところが、それぞれ各国の①全死

日本の解剖率

「日本は死因不明社会だ!」と言われて久しく『日本の解剖率って低いんだ』というイメージはあっても、実際の日本の解剖率がどれくらいか知っていますか?よくと言われる数字が、以下の2つです。【全死亡者の"1.4%"】【警察取扱死体の"11.8%"】今回は日本の解剖率について書いていきたいと思います。次回の記事"世界の解剖率"も合わせてぜひ読んでみてください。まずこの"解剖率"という言葉をはっきりさせておき
今回は致死性不整脈に分類される"ブルガダ症候群"と"QT延長症候群"について書いていきたいと思います。致死性不整脈を起こすと、心臓が適切に拍動できずに血液を全身に送れなくなり突然死してしまいます。実際のところ致死性不整脈は法医解剖から指摘するのは極めて困難で、究極的には診断に遺伝子検査が必要になってくる難しい疾患群です。ちなみに致死性不整脈を起こす疾患は今回取り上げるもの以外にも多岐に渡ります。ま

防御創と逡巡創

今回は"防御創"と"逡巡創"について書いていきたいと思います。これらは自為/他為を判断する要素のひとつとして法医学上では重要です。"防御創"とは、『他人に刃物で切りつけられそうになった際、顔面や頭部を守ろうして腕に主に手部や前腕部にできる切創(もしくは刺創)のこと』を言います。ただ創自体は通常の切創であり、創の形態に特異的な特徴があるわけでありません。切創の場所や並び方等の情報から判断されます。ま

異常圧力に関連した死

今回はに圧力に関連した死亡について書いていきたいと思います。具体的には①減圧症 ②スクイーズ ③高山病 の3つを取り上げます。①減圧症"減圧症"は、潜函病・ケイソン病(ケーソン病)、潜水病とも呼ばれ、これらを含んだ言葉です。潜函とは地下の中で工事する際に、内部を高圧にし地下水が浸水しないようにする箱のことです。潜水病とも呼ばれますが、必ずしも潜水中にのみ起こるわけでもありません。高圧環境下では通常

死後硬直

今回は死後に出てくる死体現象のひとつである"死後硬直"に書いていきます。"死後硬直"はとても有名なので多くの人が聞いたことがあると思います。『死後に筋肉が次第に硬直していく』という現象ですね。『死後に瞳孔が収縮する(縮瞳)』『死後鳥肌が立つ(鵞皮)』『死後精液が漏出する』などもこの死後硬直が関係しています。実務上では、硬直が認められると救急隊は患者さんを病院搬送しないこともある、という話もあります