SIDS(乳幼児突然死症候群)

今回のテーマは乳幼児突然死症候群(SIDS:Sudden Infant Death Syndrome)について書いていきたいと思います。※この疾患はまだ不明な点も数多く、この記事内容についてもあくまで一個人が書いた記載であって内容の保証はいたしませんことを改めてご理解ください。乳幼児突然死症候群(以下"SIDS"と呼びます)は文字通り乳幼児が突然にして亡くなる疾患です。「それまでの健康状態および既
今回も引き続き永久死体のひとつである"白骨"について書きます。白骨の鑑定は我々の法医業務の中でもわりと一定のウェイトを占めるもので、実務上は大変重要なテーマです。白骨化するまでの時間、白骨における性別判定、白骨からの身長推定などをに触れていきたいと思います。白骨とは『骨だけとなった状態』のことを言います。もう少し細かく書くと『軟部組織が消失し、骨や歯・爪・毛髪などの硬組織だけになった状態』とでも言

ミイラ化

前回の死蝋化と順番が逆な気もしますが、今回は"ミイラ化"について書いていきたいと思います。この"ミイラ化"は、"白骨化"や"死蝋化"と同じようにご遺体の終着点のひとつです。エジプトのミイラなどが皆さんにとってはイメージしやすいでしょうか。仏教における即身仏もミイラの一つと言えます。ここでの"ミイラ"とは『水分が失われ乾燥した状態のご遺体』を言います。皮膚は"革皮様化"というなめし革のように硬くなっ

死蝋化(死ろう化)

今回はご遺体がロウソクのようになる"死蝋・死蝋化"について書いていきたいと思います。この"死蝋"は"ミイラ"と同じカテゴリに分類されます。"永久死体"というカテゴリです。死蝋以外の永久死体についても、また後日書いていきたいと思います。"死蝋"は『身体がロウソクないしチーズのように変化した状態』を指します。灰色〜薄い黄白色をしていてモロモロしています。そしてこの死蝋になることを"死蝋化"と言います。

死体は水に浮くか?沈むか?

以前の"腐敗ガス"の記事に関連して、もう少し筆を進めたいと思います。『ご遺体は水中で浮くのか?沈むのか?』です。皆さんはどう思いますか。結論を書くと『どちらのケースもある』です。はっきりした答えではなくて申し訳ないです。詳しく書いていきます。教科書には『水中死体の70〜80%は死後にまず水没する』と書かれています。しかし、ご遺体がそのまま沈んでいるなら、地引き網に引っかかるなどしない限りご遺体が見

縊頚・絞頚・扼頚の違い

我々は『頚部を圧迫することによって亡くなったご遺体』を日常的にみます。一言に「首を圧迫」といっても様々なパターンがあります。具体的には縊頚・絞頚・扼頚です。今回はこれら3つの違いについてみていきたいと思います。ざっくりとは以下の通りです。縊頚:体重による索状物の首締め (→首吊り)絞頚:体重以外の力による索状物の首締め扼頚:手や指による首締め①縊頚 [いけい]これはいわゆる"首吊り"を指す言葉です

腐敗と自家融解、腐敗臭

亡くなってから時間が経つと身体は朽ちていきます。皆さんにも何となくイメージはわくと思いますが、実は『身体が朽ちる』という現象には2パターンあるのはご存知でしょうか。それが"腐敗"と"自家融解"です。今回はこの両者が区別できるようになること、そしていわゆる"腐敗臭"についての理解が深まることを目的としています。腐敗:【細菌による分解】自家融解:【酵素による分解】違いはこれです。両者を詳しくみていきま
一般の方が法医学を学ぶためにはどうすればよいのでしょうか?今回はこれについて書いていきたいと思います。現実的に、法医学を本格的に学ぶというのは思っているほど簡単なことではありません。実際の解剖から学ぶことも多く、座学だけに済まない点があるからです。そうした中でも、やはり現実なところは『医学部に入学する』これが最も確実かと思います。法医学を体系的な講義として学ぶには、現状として医学部が唯一の手段です

おすすめの法医学教科書

今回は少し毛色を変えて記事を書いていきたいと思います。『私のおすすめする法医学の教科書・テキストは何か?』です。今現在(2021年5月時点)で『法医学をもっと勉強したい方向け』の話です。今回は特に私の独断と偏見にまみれていますので、学部生の方は教授の推薦する教科書を1番に選んでください。試験に合格できれば良い、さらっと理解できれば良い、国試出題程度で良い、という方にはオーバーワークかと思います。と

脳死・脳幹死、法的脳死判定

さて前回に続き『脳死』について書いていきたいと思います。これらを読んで"脳死"と"植物状態"の違い、そして"脳死判定"の詳細が理解できるようになれればと思います。簡単におさらいをしますと、植物状態は『脳幹機能が保たれており自発呼吸が認められる』でした。これに比べ、脳死では『脳幹の機能の含め全脳機能が(不可逆的・永久的に)障害されている状態』つまり人工呼吸器が必須となる状態ということでした。脳幹は呼