副脾 [accessory spleen]

ヒトの臓器の数というのは決まっています。脳や心臓、肝臓などは1つ。肺や腎臓、副腎などは2つ。それでは"脾臓"は一体いくつあるでしょうか?答えは、、、1つ!...確かに殆どの人にとって「脾臓は1つ」が正解です。しかし、人によっては複数の脾臓を持っている人もいるのです。今回はその複数の脾臓である"副脾"についてみていきたいと思います。【副脾】:通常の脾臓の付近に存在する数cm(多くは1~2cm程度)の

腹膜ネズミ

法医学では、臨床ではなかなか見られない所見に出会うことがあります。そのひとつに"腹膜ネズミ"というものです。ネズミという名前がついていますが、決してリアルな鼠がお腹の中を這っているわけではありません。今回はそんな"腹膜ネズミ"をご紹介したいと思います。【腹膜ネズミ】:文字通り、腹膜内に生じた遊離体のこと。何らかの原因で腹膜垂(大腸にぶら下がる脂肪)の一部が脱落したものと考えられている。繊維化や石灰

腎硬化症 [nephrosclerosis]

1分間に約1Lの血液が流入し、そのうち100mLの血漿(血液の液体成分)を糸球体で濾過しながら毎分1mLの尿を作っている腎臓。そんな大事な腎臓の"成れの果て"とも言える"腎硬化症"について、今回は取り上げたいと思います。【腎硬化症】:腎臓が高血圧に曝されることによって細動脈に動脈硬化を来して起こる腎障害のこと。近年は糖尿病性腎症に次いで、透析新規導入の原疾患の第2位である。※上記の腎硬化症を"良性

死後凝血塊と血栓

『急死では血液が流動性であり、遷延死では血液が凝血塊を形成する。』この理由は、「急死の死戦期においては、凝血を溶かす線溶系が亢進するから」と言われています。法医学では、ごく基本的な知識です。しかし、法医学をやっていると、時にこの"死後凝血塊"と"病的血栓"を見間違いそうになることがあります。今回は、この両者について説明していきたいと思います。【死後凝血塊】:死後に形成される血液の塊。遷延した死を反

虚血性心疾患とは何か?

法医学で最も多い死因は"虚血性心疾患"です。(※参考記事)この"虚血性心疾患"という用語、実は法医学ではよく使われます。しかし、世間的にはあまり耳慣れない言葉だと思います。今回はこの"虚血性心疾患"について解説していきたいと思います。【虚血性心疾患】:心臓が虚血、つまり血流不足に陥ることによって、心筋細胞が酸素不足・栄養不足になってしまう病態。広義の意味では、心筋梗塞や狭心症も含む概念である。詳し
医師となれば、おそらく誰もが1度は読んだことのある"死亡診断書(死体検案書)記入マニュアル"。(以下"マニュアル")実は毎年度末になると、新年度版のマニュアルが公開されます。(厚生労働省, 死亡診断書(死体検案書)記入マニュアル_サイト)毎回微妙にアップデートされているのですが、皆さんはご存じでしょうか?今回は新しい令和5年版マニュアルと令和4年版マニュアルの違いをみていきましょう。結論から言うと

"内因性急死"とは何か?

皆さんは"内因性急死"という言葉を聞いたことがあるでしょうか?「内因性の急死、、、つまりは非外因性の急死かな」と思う方も多いでしょうが、法医学では実は少し違ったニュアンスで使われることが多い言葉なのです。今回はそんな"内因性急死"について書いていきたいと思います。【内因性急死】...一見すると、前述のように、単なる「内因性の急死」と思いがちです。しかし、これは少し違っています。日本法医学会のHPで
117F6156歳女性。強い頭痛後に、意識障害を生じたため救急車で搬入された。現病歴: 自宅で家事をしていたところ、突然強い頭痛を訴えた。その後まもなく反応が無くなったため、長女が救急車を要請した。2日前に頭痛で自宅近くの診療所を受診した際の検査結果を長女が持参している。既往歴: 12歳時に急性虫垂炎で手術。2日前に頭痛があり、自宅近くの診療所で処方された鎮痛薬を内服している。生活歴: 夫、長女お
117D1救急外来を受診した患者の損傷の写真と創部を寄せ合わせた状態の写真とを別に示す。この創の原因となったものとして最も考えられるものはどれか。a 釘b 包丁c はさみd かなづちe のこぎり正答は【b】です。[a] 誤り。釘は基本的に"刺創"を形成します。ただし釘は"有尖無刃器"に分類されます。創部は太いもので銃創に似た丸い穿孔を形成しますが、細いものでは創部が閉じてしまい、創の形態を確認しに
117B4070歳の男性.肺炎で入院加療を受けている。肺炎が治癒したため、自宅に退院予定であった。担当医が早朝診察するために病室に入ったところ、点滴チューブの結合部が外れ、床面に逆流した血液が溜まっているのを発見した。患者の状態を確認したところ、既に患者の下顎に死後硬直を認め、死亡確認を行った。この状況で次に行うべき適切な対応はどれか。a 清掃の指示b 異状死の届出c 保健所への連絡d 病理解剖の