今回はしばしば解剖でも認められる肝臓の形態異常である"絞扼肝"について書いていきたいと思います。形態的異常とは言え、"絞扼肝"に臨床的意義(法医学上も)はほぼありません。言ってしまえば、「単に肝臓に溝が認められるだけ」というものですので、そこはご安心ください。絞扼肝・コルセット肝 [corset liver]:肝表面に縦に走る溝が認められた肝臓のこと。肝臓右葉S8の上面に1-3本程度認められること

硫化水素中毒

ガス中毒で"一酸化炭素"の次にイメージされるであろう気体が"硫化水素"です。"硫化水素中毒"は『自然災害・労働災害・人災』と多方面で認められる中毒です。そして、"硫化水素中毒死"すると当然外因死となるため、我々法医学者の元にやってきます。数でこそCO中毒が圧倒的ではありますが、それでも法医学本のガス中毒の目次には"硫化水素中毒"必ず載っています。今回はそんな"硫化水素中毒"についてみていこうとおも

死体トルソー [Brandtorso]

冬は火災が多く、我々法医学者の元にも熱傷のご遺体が多く運ばれてきます。(参考記事:「焼死」)法医学でみられる"熱傷"の特徴としては、「臨床と比べ、"4度熱傷"(=炭化)が多い」ということが挙げられると思います。今回はそういった高度な熱傷のご遺体で認められる"死体トルソー"という所見について書いていきます。死体トルソー [Brandtorso]:強い火炎の作用で四肢末梢が消失し、胴体(+頭部)のみと

病死因の一覧

今回は"病死"について取り上げたいと思います。ここでの"病死"とは「身体の内部が原因となった死(=内因死)」とします。結論から先に...我々法医学者で扱うご遺体の"病死因"としてよく?挙げられる疾患名を下記に列挙しました。<循環器疾患>・虚血性心疾患  急性虚血性心疾患(急性心筋梗塞・急性冠症候群)   冠状動脈硬化症  冠動脈攣縮  慢性虚血性心疾患・弁膜症  大動脈弁狭窄症  僧帽弁閉鎖不全症

老人性紫斑 [senile purpura]

今回は法医学でもしばしば見かける"老人性紫斑"について書いていこうと思います。これは文字通り"高齢者"によく認められる皮膚所見です。"老人性紫斑"、これ自体は死に至るような重篤な疾病ではありません。しかし、時に"皮下出血"と見間違う?ことがあるため、検案の際には注意が必要になってきます。老人性紫斑 [senile purpura]:高齢者に認めやすい紫斑(≒皮下出血、いわゆる"痣")のこと。日光の

行動能力

今回は法医学でも一二を争うくらい重要な項目である"行動能力"というものについて書いていきたいと思います。【行動能力】皆さんはこの言葉を聞いたことがありますか?法医学はこの"行動能力"の理解抜きには語れません。それでいて実はかなり難しいテーマなのです。。『行動能力』:(特に受傷後などに)自力で何らかの行動・行為ができる能力のこと。例えば「頭をぶつけた後に歩行することができたのか?」「出血が始まってか
『耳たぶの皺が冠動脈疾患に関係している』そういった説があります。この耳たぶの皺のことを"フランク徴候"と呼ばれます。今回はこのサインについて取り上げます。フランク徴候[Frank's sign]:耳たぶ(耳垂)にできる皺のこと。特に耳珠切痕から出来た皺を指すことが多い。冠動脈疾患(≒心臓の動脈硬化)と関連が指摘されているが、まだまだ議論の余地がある。皺の程度によってグレードが4つに分けられます。(

抗精神病薬と頭蓋骨肥厚

『精神疾患を持つご遺体の頭蓋骨は厚い』法医学者の間でそんな話をよく耳にします。法医解剖では、脳を含めた頭蓋内所見をみるために原則頭蓋骨を開けます。その際に「あれっ?頭蓋骨が厚いな。」と気付くわけですね。今回はそんな「抗精神病薬と頭蓋骨肥厚」を取り上げたいと思います。↓画像のように特に前頭骨が厚くなっている症例をしばしば経験します。厚くなる理由は一説によると、『抗精神病薬(向精神薬)、特に"フェニト

人は皆、安らかな表情で死ぬ

「最期の顔は安らかで...」そんな表現がよくなされますよね。本当にそうなのか?逆に"苦しい表情"で亡くなることはあるのか?今回はそんな"死亡時の表情"について書いていきたいと思います。結論から先に言うと...基本的に『誰しも死後の表情は安らかとなる』記事タイトルにもあるように、これが結論です。詳しくみてきましょう。表情というのは顔面の"筋肉"によって創られます。死後は全ての"筋肉"において死後硬直
医学部のカリキュラムには"法医学"が含まれています。歯学教育のカリキュラムにすら"法歯学"は含まれておらず、その他の学部をみてみても、おそらく現代の医療系資格・医療系学部で法医学があるのは医学部が唯一です。これはある意味で、医学部の特徴だったりします。教育カリキュラムに含まれていますので、医師国家試験の出題範囲にも当然"法医学"が含まれています。毎年およそ2〜3問程度の法医学問題が出題されていまし