病死因の一覧

今回は"病死"について取り上げたいと思います。ここでの"病死"とは「身体の内部が原因となった死(=内因死)」とします。結論から先に...我々法医学者で扱うご遺体の"病死因"としてよく?挙げられる疾患名を下記に列挙しました。<循環器疾患>・虚血性心疾患  急性虚血性心疾患(急性心筋梗塞・急性冠症候群)   冠状動脈硬化症  冠動脈攣縮  慢性虚血性心疾患・弁膜症  大動脈弁狭窄症  僧帽弁閉鎖不全症

老人性紫斑 [senile purpura]

今回は法医学でもしばしば見かける"老人性紫斑"について書いていこうと思います。これは文字通り"高齢者"によく認められる皮膚所見です。"老人性紫斑"、これ自体は死に至るような重篤な疾病ではありません。しかし、時に"皮下出血"と見間違う?ことがあるため、検案の際には注意が必要になってきます。老人性紫斑 [senile purpura]:高齢者に認めやすい紫斑(≒皮下出血、いわゆる"痣")のこと。日光の

行動能力

今回は法医学でも一二を争うくらい重要な項目である"行動能力"というものについて書いていきたいと思います。【行動能力】皆さんはこの言葉を聞いたことがありますか?法医学はこの"行動能力"の理解抜きには語れません。それでいて実はかなり難しいテーマなのです。。『行動能力』:(特に受傷後などに)自力で何らかの行動・行為ができる能力のこと。例えば「頭をぶつけた後に歩行することができたのか?」「出血が始まってか
『耳たぶの皺が冠動脈疾患に関係している』そういった説があります。この耳たぶの皺のことを"フランク徴候"と呼ばれます。今回はこのサインについて取り上げます。フランク徴候[Frank's sign]:耳たぶ(耳垂)にできる皺のこと。特に耳珠切痕から出来た皺を指すことが多い。冠動脈疾患(≒心臓の動脈硬化)と関連が指摘されているが、まだまだ議論の余地がある。皺の程度によってグレードが4つに分けられます。(

抗精神病薬と頭蓋骨肥厚

『精神疾患を持つご遺体の頭蓋骨は厚い』法医学者の間でそんな話をよく耳にします。法医解剖では、脳を含めた頭蓋内所見をみるために原則頭蓋骨を開けます。その際に「あれっ?頭蓋骨が厚いな。」と気付くわけですね。今回はそんな「抗精神病薬と頭蓋骨肥厚」を取り上げたいと思います。↓画像のように特に前頭骨が厚くなっている症例をしばしば経験します。厚くなる理由は一説によると、『抗精神病薬(向精神薬)、特に"フェニト

人は皆、安らかな表情で死ぬ

「最期の顔は安らかで...」そんな表現がよくなされますよね。本当にそうなのか?逆に"苦しい表情"で亡くなることはあるのか?今回はそんな"死亡時の表情"について書いていきたいと思います。結論から先に言うと...基本的に『誰しも死後の表情は安らかとなる』記事タイトルにもあるように、これが結論です。詳しくみてきましょう。表情というのは顔面の"筋肉"によって創られます。死後は全ての"筋肉"において死後硬直
医学部のカリキュラムには"法医学"が含まれています。歯学教育のカリキュラムにすら"法歯学"は含まれておらず、その他の学部をみてみても、おそらく現代の医療系資格・医療系学部で法医学があるのは医学部が唯一です。これはある意味で、医学部の特徴だったりします。教育カリキュラムに含まれていますので、医師国家試験の出題範囲にも当然"法医学"が含まれています。毎年およそ2〜3問程度の法医学問題が出題されていまし
2022年1月31日発売 [5500円+税] 医学書院 (出版社URL)『標準法医学 第8版』B5判 全352頁 (編集:池田 典昭, 木下 博之)定評ある法医学の教科書、全編カラー化の改訂第8版。死因究明等推進基本法、死因・身元調査法などの新法や、医療事故調査制度についての解説を追加。現代の法医学にかかわる重要なトピックスをコラムとして盛り込み、付録として死亡診断書(死体検案書)の書き方を収載。
将来の道に悩んでいる時、実際に有用なのは"メリット"よりも"デメリット"に関する情報だったりしますよね。ですので、今回は「法医学医になるデメリット」について、私自身の経験も踏まえて書いていきたいと思います。話は"臨床医"と"法医学医"の対比を軸に進めていきます。つまり今回のテーマは、正確には『臨床医ではなく法医学医になるデメリット』とお考えください。『法医学医になる5つのデメリット』・臨床医学から

児童虐待を疑う外傷

前回取り上げたテキスト[法医学 改訂4版]の参考文献に分かりやすいものが載っていました。"横浜市子ども虐待防止ハンドブック"です。(→参考URL)これは虐待防止の観点から横浜市が発行・無料公開されているものです。今回はそれを引用しながら"虐待を疑う外傷"についてみていきたいと思います。『虐待の可能性が高い外傷部位』:耳部、腋窩部、胸部、腹部、陰部、背部。※被服部位、手背、測定、大腿部内側に存在した