将来の道に悩んでいる時、実際に有用なのは"メリット"よりも"デメリット"に関する情報だったりしますよね。ですので、今回は「法医学医になるデメリット」について、私自身の経験も踏まえて書いていきたいと思います。話は"臨床医"と"法医学医"の対比を軸に進めていきます。つまり今回のテーマは、正確には『臨床医ではなく法医学医になるデメリット』とお考えください。『法医学医になる5つのデメリット』・臨床医学から

児童虐待を疑う外傷

前回取り上げたテキスト[法医学 改訂4版]の参考文献に分かりやすいものが載っていました。"横浜市子ども虐待防止ハンドブック"です。(→参考URL)これは虐待防止の観点から横浜市が発行・無料公開されているものです。今回はそれを引用しながら"虐待を疑う外傷"についてみていきたいと思います。『虐待の可能性が高い外傷部位』:耳部、腋窩部、胸部、腹部、陰部、背部。※被服部位、手背、測定、大腿部内側に存在した
2022年1月14日発売 [5500円+税] 南山堂 (出版社URL)『法医学 改訂4版』全379頁 (監修:福島弘文. 編集:舟山眞人, 齋藤一之)[真実を見る!いのちを考える!]社会情勢のさまざまな変化により,死亡の原因究明に法医学が期待される場面が増えています.2020年から世界的に多数の死者が出ているCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)の法医病理学的な記述も含めた最新の情報と,医学
喉が渇くと飲むジュース。しかし、それも過ぎたるは"毒"となります。その病態の本質が"糖尿病性ケトアシドーシス"ないし"糖尿病性ケトーシス"です。世間では俗に"ペットボトル症候群"や"清涼飲料水ケトーシス"と呼ばれることもありますね。(※俗称のため法医学では使わない)今回はこのいわゆる"ペットボトル症候群"を取り上げたいと思います。『ペットボトル症候群』:病態の本質は"糖尿病性ケトーシス"や"糖尿病

てんかん突然死 [SUDEP]

心臓急死である"致死性不整脈"とともに解剖だけで指摘が困難な病死があります。それが今回のテーマである"てんかん"です。両者で共通するのは『どちらも異常な電気活動に起因した死』と言えます。今回はそのうち"てんかん"について書いていこうと思います。【てんかん】:脳神経細胞の異常な興奮・電気的活動により痙攣といった症状を起こす慢性の中枢神経系疾患。※繰り返すもの(つまり2回以上)を"てんかん"と言うので
「お酒の飲み過ぎは身体に良くない」「休肝日を作りましょう」そんな話をよく耳にします。お酒が大好きな人にとっては耳が痛い話でしょう。しかし、何故身体に良くないのか?ということに関してはあまり聞きません。何となく「肝臓に良くないんだろうな」というイメージはあっても、具体的に「何故それが死に至るのか?」については理解できていない人も多いと思います。今回はそんな『お酒が何故死に繋がるのか?』について解説し

『自殺攻略本』レビュー

2021年1月1日発売 [1300円+税] イデオロギー社 (※出版社公式サイトなし?)『自殺攻略本 ~現実はドラマのように美しくは死ねない~』 (著:イデオロギー社)美しい自殺なんてありません。ドラマでは致死量の薬物を飲み干して終わりですが、現実では、全身の穴という穴から内容物を垂れ流し、のたうち回ります。高所から飛び降りた場合には、全身がジグソーパズルのように骨折し、血肉はカエルのように地面に
1993年7月5日発売 [1165円+税] 太田出版 (出版社URL)『完全自殺マニュアル』 (著:鶴見 済)世紀末を生きる僕たちが最後に頼れるのは、生命保険会社でも、破綻している年金制度でもない。その気になればいつでも死ねるという安心感だ! 自殺の方法を克明に記し、さまざまな議論を呼んだ、聖書より役に立つ、言葉による自殺装置。(※出版社サイトより)この本を読み終えたので、今回はレビューを書いてい
新年が始まって、法医学者が気をつけるべきことがあります。それは、死体検案書を作成する際の【死亡したとき】欄です。この【死亡したとき】というのは、文字通りお亡くなりになった時刻を書きます。("死亡確認時刻"ではない)明確な時刻が分からない場合も、死亡時刻を推定して書きます。従って、新年明けて間もない頃は『"死亡したとき"と最下部の"検案日"の年がズレる』のです。死亡したときと検案日で、"月"や"日"

法医学者の仕事納め

今年も残すところあと少しですね。当然法医学者にも年末年始はあります。ただ我々にとって休日は必ずしも絶対的なものではありません。ご遺体には年末年始は関係ありませんからね。警察が法医学者を必要とあらば、年末年始休日問わず解剖を行います。早くご遺体を遺族の元に帰してあげたいですし!ちなみに、私のいる地域はおそらく皆さんが思っている以上に結構あります。さて、そんな不確実な年末を目の前にして、私自身が毎年仕