病理医と比べた法医学医の特徴として『外表所見を細かくみる』というのがあります。確かにその通りで、法医学では「外表から観察される所見(表皮剥奪や皮下出血など)」をかなり重要視します。それが外傷を示す重要な証拠になるからです。ですので、擦り傷が身体中にたくさんある場合でも、一つ一つ番号を付けて所見を取っていくのです。当然所見を取るだけで終わってはいけません。それを"文書化"することが必要です。最も簡単

臓器の重さランキング

皆さんの身体でも日々臓器が働いています。しかし、その重さがどれくらいなのか?というのを知っている人は少ないはずです。今回はそんな漠然とした臓器がある程度具体的にイメージできるようになればと思います。各臓器の重さ(+消化管の長さ)はおよそ↓表の通りです。※これはあくまで私見です。正確なデータは成書をご確認ください。ということですので、重い臓器TOP5を挙げると...1. 脳2. 肝臓3. 肺4. 心

血栓症と塞栓症の違い

間違いやすい医学用語として、"血栓症"と"塞栓症"があります。やはり両者は大きく違います。今回はこれについて書いていこうと思います。【血栓症】 [embolism]:血栓が出来た状態のこと。血液や血流、内皮などの異常によって起きる。ex. アテローム性脳梗塞, 心筋梗塞...etc【塞栓症】 [thrombosis]:出来た血栓が血流に乗り、他部位を閉塞すること。ex. 心原性脳梗塞, 肺塞栓..

充血と鬱血の違い

今回は法医学でもよく出てくる"充血"と"鬱血"(うっ血)の違いについて書いていきたいと思います。日常生活ではしばしば混同されがちですが、両者は病理学的には明確に違います。【充血】:動脈血の増加。動脈の拡張による。ex. 結膜充血...etc【うっ血】:静脈血の増加。静脈血流のうっ滞による。ex. 肺うっ血...etc詳しくみていきましょう。血液は全身を駆け巡っています。動脈血として全身に酸素や栄養

法医実務と研究

『理想的な法医学者とは何か?』これに関してはいろいろな考え方があると思います。一般の皆さんにとっては、ドラマや漫画のように「鋭い視点から事件の深層を暴ける法医学者」ということになるんでしょう。これは、いわゆる"実務者"としての法医学者の側面を表していると言えます。しかし、当然それ以外の側面が法医学者にはあります。今回はそんな"理想の法医学者"について、"解剖・研究 + 教育"の3つの視点から書いて

法医学医は今の2倍必要である

「世界各国と比べても日本は解剖件数が少ない」そんな話をよく聞くと思います。(参考記事:「日本の解剖率」)実際、法医解剖(司法解剖+調査法解剖+行政解剖+承諾解剖)の件数を見てみると、全国の法医解剖件数:約2万件そのうち 大学法医学教室:約1万2000件+監察医機関:約8000件といったところです。これを踏まえた上で、今回は『年間どれくらい解剖すべきなのか?』というのを考えていきたいと思います。【理
今回は"ペースメーカー"についてです。近年は医学の発達とともに、ペースメーカーが体内に入ったご遺体の解剖を経験する機会も増えました。今は患者さんが病院に来なくても遠隔操作で情報を読み取れたりもするそうで、科学技術はまだまだ進歩していくのでしょうか。さて、ペースメーカーのように身体に埋め込むタイプの心臓治療デバイスは"ペースメーカー"だけではありません。・ペースメーカー(PM)・植え込み型除細動器(

口頭剖検 [verbal autopsy]

今回は"verbal autopsy"について書いきます。日本語では"口頭剖検"と呼ばれるようですが、私自身もあまり聞きません。英語での[verbal autopsy](=VA)の方が有名な気がします。【verbal autopsy】:遺族や医療スタッフへの聴取に基づいて死因を確認するために用いられる手法。Verbal autopsy is a method used to ascertain t

解剖時のにおい

解剖でも五感をフルに活用します。・視覚・聴覚・触覚・嗅覚 (→ 今回)・味覚...ではなく第六感!の五感ですね。今回はこのうちの"嗅覚"に焦点を当てたいと思います。解剖時には様々なにおいを感じます。慣れてくると、解剖室に入った瞬間に、そのにおいでご遺体の状況が分かってきます。今回はそんな"におい"についてご紹介していきましょう。特徴的なにおいは下記の通りです。・腐敗のにおい・ミイラのにおい・死蝋の
今回は"解剖助手"の仕事についてご紹介したいと思います。「解剖"助手"って何?」「実際に解剖では何をするの?」という点に絞って書いていきたいと思います。なお細かな解剖助手業務については、法医学教室や所属する施設によって違います。この記事が全てだと思わないでくださいね。『解剖助手』:執刀医(法医学医)の"解剖補助"を行う者。"解剖補助"は剖出業務に限らない。解剖助手の殆どが"臨床検査技師"の資格を持