遷延性窒息

"窒息"と聞くと、数分程度の短時間で死に至るイメージがあると思います。(参考記事:「窒息」)ところが、そうではなく比較的長期間経過した後に亡くなる病態の"窒息"も存在するのです。それが"遷延性窒息"です。今回はそんな"遷延性窒息"を取り上げたいと思います。【遷延性窒息】:窒息状態から比較的長時間経過後に死亡する病態のこと。詳しくみていきます。まず勘違いされやすいのですが、この"遷延性窒息"は「窒息
DNAや遺伝子は、法医学でも広く利用されています。使用目的は主に下記の2つです。・個人特定・死因究明前者はいわゆる"DNA鑑定"のことで、一般的にもイメージしやすい分野だと思います。(参考記事「DNA鑑定 ① ②」)今回ご紹介するのは、後者の『死因究明のための遺伝子検査・遺伝子診断』です。法医学ではこの学問領域を"法医分子病理学"と呼んでいます。早速みていきましょう。【法医分子病理学】(foren
これまで様々な年齢推定法をご紹介してきました。・歯の咬耗度 (参考記事①)・歯髄腔の狭窄度 (参考記事②)・頭蓋骨縫合の癒合状態 (参考記事③)・恥骨結合面の状態 (参考記事④)全身の骨がまとまって出てきた場合は上記の方法を使って年齢推定することができるでしょう。しかし、歯や頭蓋骨、骨盤が見つからなかった場合にはどうすればよいでしょうか?今回は"上腕骨"(もしくは大腿骨)が見つかった際に適用できる
法医学では外傷症例を多く経験します。臨床と比べると、法医学では特に死に至る重症外傷が当然多くなってきます。・頭蓋骨骨折・脊椎骨折・上腕骨骨折・大腿骨骨折・骨盤骨折...etc近年は死後画像検査を実施する教室も増えてきましたので、骨折の発見は従来よりも比較的容易になってきていると言えるでしょう。今回はこの中の"骨盤骨折"を取り上げます。法医学の教科書によく出てくる骨盤骨折の類型があります。それを基に
年齢推定の方法には様々あります。・歯の咬耗度 (参考記事①)・歯髄腔の狭窄度 (参考記事②)・頭蓋骨縫合の癒合状態 (参考記事③)上記は主に頭蓋骨に関係する所見から推定する方法でした。今回ご紹介する方法は"骨盤"の所見です。具体的には骨盤を構成する骨の中の"恥骨の結合面"をみます。早速見ていきましょう。恥骨結合:靱帯によって左右恥骨が結合している部分。恥骨結合面:恥骨が向き合って結合している面。表
頭蓋骨が単独で見つかった際、その年齢推定はどうすれば良いでしょうか?上顎骨や下顎骨があれば、その咬耗度を観察することである程度年齢を絞れる可能性もあります。(参考記事:「咬耗度による年齢推定」)またレントゲンやCTがあれば歯髄腔による年齢推定ができるかも知れません。(参考記事:「歯髄腔の狭窄度による年齢推定」)しかし、時に歯が抜け落ちてしまっていたり、そもそも下顎骨が無かったりすることもしばしば経
以前、歯の咬耗度による年齢推定について書きました。(参考記事:「咬耗度による年齢推定」)こちらは『年齢を重ねるにつれてすり減る歯から逆算的に年齢を推定する』というものでした。実はそれ以外も歯の所見による年齢推定の方法があります。それが今回ご紹介する"歯髄腔の狭窄度"です。こちらも加齢性変化を逆手にとった年齢推定の手法です。早速みていきましょう。【歯髄腔の狭窄度による年齢推定(藤本の分類)】全ての歯
目の前に身元不明のご遺体がある場合、『そのご遺体が「誰なのか?」を特定すること=身元特定すること』は法医学においても重要です。「〇〇さんかな?」という心当たりのある人がいるのなら、DNA型を判定することで個人を特定することができるかも知れません。(参考記事:DNA鑑定)そのような"心当たり"がない場合でも、ご遺体の所見から年齢や性別、身長といった個人の特定に繋がる情報を推定することで、その対象群を

老人環 [arcus senilis]

ご遺体の身元特定が不明の場合、年齢推定することはとても重要です。ある程度の年齢が推定できることで、ターゲットとなる対象者を狭めることができるからです。法医学で使われるポピュラーな年齢推定の方法としては・歯のすり減り具合/咬耗度・上腕骨の骨髄腔の高さ・頭蓋骨縫合の癒合の程度・骨の骨棘形成の程度・恥骨結合面の平行隆線の様子などが挙げられます。ご覧のように、これらは基本的に"骨の所見"に基づく推定が多い
"医師の働き方改革"が議論され始めて久しいですね。日々多忙な"法医学医"にとっても"働き方改革"が進むことが望まれます。ところが、実際はなかなか思うようには進んでいない印象です。我々法医学医の中で最も重要な業務のひとつが"法医解剖"です。解剖で得られた所見から、死因や死亡した時期などを究明していく...とても責任重大な業務です。「そんな"法医解剖"に、タスクシフト・タスクシェアの余地はあるのか?」