皆さんは釣りは好きですか?私は人並みにしかやったことはありません。好きな人は夜中や朝方にも釣りに行くそうですね。今回はそんな"釣り人"にまつわる小話でもしたいと思います。記事タイトルの通り、『釣り人はご遺体の第一発見者であることが多い』んですよ。おそらく皆さんが思っている以上に多いです。『海で浮かび漂っているご遺体を釣り人が発見した』という警察からの触れ込みは、特に夏の法医学教室で結構聞かれます。

法医学は文系である?

今回は『法医学は本当に理系なのか?』というテーマについて書いていきたいと思います。"法医学"は"医学"の一分野であり「受験においては"理系"である」ということは明確に言えるでしょう。しかし、"法医実務"という観点から考えると、必ずしも「完全な理系である」とは言えない状況もあると感じています。今回は『法医学における文系要素』をみていきます。私自身が普段感じていることなので、小難しい感じでなく気軽に読

溺死・溺水

今回のテーマは"溺死・溺水"についてです。日本は海に囲まれているので、こういった水害が頻繁に起こります。またお風呂好きな日本人独特の死として、"水浴死・風呂溺"というものもあります。(参考記事:「風呂溺・ヒートショック」)このように日本の法医学者にとっても"溺死・溺水"は切っても切れない関係なのです。そんな"溺死・溺水"を今回は取り上げたいと思います。『溺水』:液体(主に水)が侵入することで気道が

遺体の引き取り人

今回は"遺体の引き取り人"のお話をします。人が亡くなった際、必ず必要になるものがあります。それが"引き取り人"です。『(遺体)引き取り人』:解剖後にご遺体を引き取り、責任を持ってその後の手続きをする人。原則親族が該当する。私自身法律に詳しくないのですが、この"引き取り人"と"相続人"とは必ずしも同じ意味ではなく、「遺体引き取り拒否」と「相続放棄」とは別次元の話だそうです。この点に関して、詳しくは法

法医学者の食事

今回は"法医学者の食事"について書きたいと思います。とは言っても、普通の大学スタッフと変わらないんですけどね。笑結論から言うと、・お弁当を持って行く・コンビニで買って行く・買い置きしてあるものを食べる・学食で食べるといったところでしょうか。私自身はお弁当かレトルトが多いですかね。法医学教室は大学にあるので学生食堂もあるのですが、行ったとしても私は解剖が入ってない日くらいです。昨今は感染症のこともあ
今回は解剖で実際に使う道具をご紹介したいと思います。手術と違い、解剖では活動性の出血がないため、手術道具で使うような繊細な道具は比較的多くはありません。早速みていきましょう。【切る道具】・メス・解剖刀・剪刀(はさみ)・肋骨剪刀【掴む道具】・有鉤/無鉤鑷子(ピンセット)・有鉤/無鉤鉗子・骨鉗子【計る道具】・定規・秤・ゾンデ・ノギス・角度計【その他】・木枕・解剖用鋸・骨膜剥離子・T字ノミ・ノミ・金槌・
法医実務では、白骨を鑑定する機会もしばしばあります。参考記事:白骨・白骨化免許証や服装、その他身元特定に繋がるような試料が残されていれば、ある程度スムーズに事が運びます。しかし、それらがない場合、身元を特定するものが何もない場合、骨から得られた個人を推定できる所見が頼りとなってきます。とは言え、「どこの誰か?」レベルまで特定することは実際は難しいことが多いです。(骨折用プレートやペースメーカーなど
今回は"頭蓋にまつわる血腫・出血"を取り上げていきたいと思います。有名なところで言えば"くも膜下出血"や"硬膜下血腫"です。脳が身体の中でも重要な臓器のひとつであることはもはや言うまでもありませんよね。その脳を守るのが"頭蓋骨"です。脳を守るためには当然防御力が高くないといけません。従って、頭蓋は固い骨で形成されています。(ちなみに頭蓋を形成する骨は"15種23個"です。)しかし、そのように堅い骨

縊頚 -首にかかる力とその影響-

"縊頚"(いわゆる"首吊り")という方法は、自殺の手段の中で最も多くを占め、本邦では全体のおよそ7割に及びます。そのため、法医実務の中でも"縊頚"にまつわる所見やポイントというのは結構存在します。参考記事:縊頚・絞頚・扼頚の違い参考記事:シモンの出血参考記事:アミュサ徴候今回は、その"縊頚"に絞って書いていこうと思います。取り上げるのは以下の2点です。・首にかかる力・動脈/静脈/気管の閉塞・舌骨/
今回は鈍的外傷の際に認められる"二重条痕"について書いていきたいと思います。この"二重条痕"は特殊な条件下で起こりやすいと言われており、時に虐待などにおいても問題になることがあります。『二重条痕』[double linear marks]:直接打撃を受けた部位が蒼白調を呈し、その周縁に皮下変色が生じた創傷のこと。("辺縁性出血"と呼ぶこともある)具体例を挙げると...棒状の鈍体による打撃 → 平行