"縊頚"(いわゆる"首吊り")という方法は、自殺の手段の中で最も多くを占め、本邦では全体のおよそ7割に及びます。そのため、法医実務の中でも"縊頚"にまつわる所見やポイントというのは結構存在します。参考記事:縊頚・絞頚・扼頚の違い参考記事:シモンの出血参考記事:アミュサ徴候今回は、その"縊頚"に絞って書いていこうと思います。取り上げるのは以下の2点です。・首にかかる力・動脈/静脈/気管の閉塞・舌骨/
今回は鈍的外傷の際に認められる"二重条痕"について書いていきたいと思います。この"二重条痕"は特殊な条件下で起こりやすいと言われており、時に虐待などにおいても問題になることがあります。『二重条痕』[double linear marks]:直接打撃を受けた部位が蒼白調を呈し、その周縁に皮下変色が生じた創傷のこと。("辺縁性出血"と呼ぶこともある)具体例を挙げると...棒状の鈍体による打撃 → 平行
今回は法医学の大学院生(博士課程)の生活について書いていこうと思います。主に私の経験を元にした記載内容です。研修医としての卒後臨床研修は終えている前提で話を進めさせていただきます。(参考記事:「法医学と研修制度」)またいわゆる"論文博士"ではなく"課程博士"について書きます。今回のテーマ内容はあくまでも"私の場合"であって、各法医学教室によってかなり大きく異なります。具体的には言えませんが、周りの
今回のテーマは"法花粉学"です。皆さんは"法花粉学"という言葉を知っているでしょうか?実は私自身も海外の教科書を読むまでその存在を知りませんでした...。しかし、英語版ウィキペディアにも載っているような由緒正しい?学問なんですよ!(参考Wiki:Forensic Palynology)"法昆虫学"とも似ているようで似ていないような...。(※参考記事:「法昆虫学・法医昆虫学」)むしろ溺死の際の"プ
"法医学"や"法医学者"という言葉の定義は様々ありますが、私が自身を説明する際に言うセリフはいつも決まっています。『私は死因を究明する人です。』解剖する人でも、事件を解決する人でもありません。私自身は法医学者は死因究明のための職業だと思ってやっています。今回は"死因究明の意義"について考えていきます。なぜ死因究明が必要なのか?答えは「必要とする人がいるから」と言えます。一見答えになっていませんが、
今回は肩の力を抜いて「法医学者あるある」です。医者の中でも特殊な存在である法医学医。私自身が実際に経験したことを中心に"あるある"を書いていきたいと思います。・解剖後は極力エレベーターは使わない・マイ長靴を持っている・検視官や警察官と仲良くなる・バイト先で死亡診断書の書き方を聞かれる・海や山に行くと人気のないところが無駄に気になる・職業を聞かれた際に何と言っていいか迷うこれらの"あるある"に加え、
今回は"ベックウィズ徴候"[Beckwith's sign]を取り上げます。この所見は"乳幼児突然死症候群"(SIDS:Sudden Infant Death Syndrome)で認められ得る所見とされます。SIDSは原因不明の乳(幼)児の突然死です。(参考記事:「乳幼児突然死症候群(SIDS)」)SIDSの診断には解剖が必須であり、『解剖を経ても何も死因が認められなかった』という所見が必ず必要と
今回は溺死時に認められることのある"セールト徴候"[Sehrt's sign]について書いていきます。溺死時に認めれる所見は他にもありました。参考記事①:パルタウフ斑参考記事②:ワイドラー徴候参考記事③:スヴェチニコフ徴候ただ「"セールト徴候"がある」からといってすぐに「死因は溺死である」という話にはならないのは他の所見とも共通した概念です。【セールト徴候】[Sehrt's sign]:溺死時に認
今回は"クレンラインショット"という銃器損傷にまつわる現象について書いていきます。銃器損傷の詳細は参考記事を是非ご覧ください。銃器損傷①:射創の種類銃器損傷②:射創の距離銃器損傷③:射創の向きなかなか射創・銃創というのは、日本ではあまり馴染みがありません。しかし、アメリカでは薬物中毒とともに"銃創"は大きなテーマであり、報告や研究も進んでいます。今回はそんなアメリカ、、、ではありませんが、スイスの
2021年10月14日発売 [900円+税] 京阪奈情報教育出版 (出版社URL)『命に寄り添う法医学 ~「愛」と「生」と「死」と~』 (著:羽竹勝彦)近年、テレビドラマなどで世間の認知度が高くなった法医学。法医学者の監修によりしっかりとした内容になってはいるが、誤解を生むような場面も多々あるのが現状。また、新聞記事や報道番組などで殺人事件が報道されるたび法医学の知識があれば、より興味をもって深く