今回は少し趣向を変えて、視点を裁判所からに変えてみましょう。『裁判において"証拠"とはどのような基準で判断されるのか?』例えば、DNA鑑定やポリグラフ鑑定・筆跡鑑定・声紋鑑定などの科学技術はある程度確立され、現在では「証拠能力はある」と判断されていると思います。しかし、もしまだ一般的ではない"トンデモ科学"と一見して思われるようなデータが証拠として裁判で提出された場合はどうでしょう。それはどのよう

RT-PCR (reverse transcriptase)

今回は"RT-PCR"という技術について書いていこうと思います。「あれ...以前書いたんじゃ?」と思った方もいらっしゃると思います。前回"リアルタイムPCR"について書きました。(参考記事:「リアルタイムPCR」)この"リアルタイムPCR"と今回の"RT-PCR"は全くの別物です。「Real Time = RT」と勘違いする学生さんも多いですが、そうではないのです。この混同を避けるために、"リアル
以前PCRについて解説しました。今回はそれを踏まえて、PCRの発展技術として"リアルタイムPCR"を書いていこうと思います。この"リアルタイムPCR"は、定量のために行われることから"定量PCR"[=quantitative PCR]、通称"qPCR"とも呼ばれています。参考記事:PCR (ポリメラーゼ連鎖反応)おさらいしますと、PCRでは、・(DNA)ポリメラーゼという酵素・目印となる2つのプラ

法医解剖と病理解剖の違い

"解剖"にはいくつかの種類があります。大きな括りをすると以下の3つです。・法医解剖・病理解剖・系統解剖このうち最後の"系統解剖"は「医学教育のための解剖」ということで分かりやすいでしょう。そこで今回は残りの2者"法医解剖と病理解剖"の違いに注目して書いていきたいと思います。法医解剖:法医学分野で行う解剖。司法解剖、行政解剖、承諾解剖、(死因身元)調査法解剖の4種類の解剖。病理解剖:病院の病理部門に
法医学には様々なバックボーンをもった人がいます。・ダイレクトに法医学教室に足を踏み入れた法医学者・臨床医から転科?してきた法医学者・弁護士資格を持つ法医学者・企業や科捜研から鞍替えしてきた法医学者どんな法医学者であっても、どこかタイミングで当然『法医学に進もう』と思ったわけです。今回はそんな"法医学者を目指した動機・理由"というのをテーマに書いていこうと思います。冒頭に書いたように、法医学者にもい

法医学と薬剤師

法医学においては、医師や臨床検査技師などの資格を持った人が活躍しています。(参考記事:「いろいろな法医学者」)法医学で活躍する国家資格も上記2種だけでは当然ありません。歯科医師・看護師・診療放射線技師...etc。その中でも今回は"三師会"のひとつにも数えられる"薬剤師"について書いていきたいと思います。法医学における薬剤師さんは、・"薬毒物分析"という法医実務・法医学教室における"研究"上記の2
解剖は死因を究明するために行われます。では実際のところ『解剖をするとどれくらいの割合で死因が特定できるのか?』今回はこれについて書いていきたいと思います。また"解剖"だけでなく、"死後CT検査"や"体表観察"のみの場合による死因確定率も一緒にみていきましょう。結論から書きますと、各方法による死因確定率は...解剖のみ:80%死後CTのみ:30%死後MRIのみ:50%体表観察(検案)のみ:10%ざっ

PCR法 (ポリメラーゼ連鎖反応)

今回はDNA分野で頻繁に用いられる"ポリメラーゼ連鎖反応"(通称PCR)という手法について取り上げたいと思います。PCR = Polymerase Chain Reactionということなので、この反応は(DNA)"ポリメラーゼ"という酵素が重要な鍵となっています。DNA(デオキシリボ核酸)は細胞の核内に存在します。そして細胞が分裂する際には、その持っているDNAも複製しなければなりませんよね。ま

法医学の教授

皆さんは法医学の教授にどのようなイメージがありますか?当然"白い巨塔"のようにドロドロなんてしていませんよ。法医学教室は大学(院)の一部門であるため、他の教室と同様基本的には必ず教授ポストがあります。今回は特に法医学の教授に特徴的な点をメインに書いていこうと思います。どれも「他部門(臨床系教授など)と比べて〜」という意味だとお考えください。・若くして教授になることが多い・そのため教授歴も長くなるこ

口唇紋・掌紋・足紋

以前、個人特定に使用される方法として"指紋法"の記事を書きました。(参考記事:「指紋法」)指紋は「指先にある紋様」のことでした。"終生不変・万人不同"を特徴とし、現代でも有用なツールとして現場で使用されています。しかし、人体の中で紋様があるのは指先だけなのでしょうか?答えは否です。身体には他にも特有な紋様を持つ部位が多数あります。具体的に『くちびる・手のひら・足』です。今回はこれら3つの"紋"につ