アミュサ徴候(Amussat's sign)

今回は首吊りの際などに認められることのある"アミュサ徴候"[Amussat's sign]について取り上げます。首吊りの解剖所見としては、他に"シモンの出血"というものがありました。(参考記事:「シモンの出血」)"シモンの出血"とは『首吊りの際の重力効果によって椎間板の前方に出血を来す』というものでしたね。"アミュサ徴候"はこの"シモンの出血"に若干通ずるものがある気が私はしています。【アミュサ徴

ニスタンの法則(Nysten's rule)

今回のテーマは死後硬直に関係した"ニスタンの法則"[Nysten's rule]です。死後硬直自体については、以前に詳しく書いております。参考記事:死後硬直実は上の記事内でも"ニスタンの法則"についてフワッと触れているんですよね。【ニスタンの法則】[Nysten's rule/law]:『死後硬直は身体の上から下に向かって発現していく』という法則のこと。この法則はフランスの小児科医であるピエール-
今回は"スヴェチニコフ徴候"[Svechnikov's sign]という所見について取り上げます。この"スヴェチニコフ徴候"は、溺死の診断の際に認められる重要な所見のひとつです。所見が認められる主座は副鼻腔、特に"蝶形骨洞"になります。【スヴェチニコフ徴候】[Svechnikov's sign]:溺水の際に吸引した水が蝶形骨洞に貯まった状態のこと。その名の通り、ロシアのスヴェチニコフ先生が由来とな

プッペの法則(Puppe's rule)

今回は"プッペの法則"[Puppe's rule]について書いていきます。この"プッペの法則"は主に頭部外傷において使用される理論です。『複数の打撃によって骨が折れた際、どの順番で骨折が出来たのか?(≒どの順番で打撃されたのか?)』という質問に対して答える時に便利です。論理的でありながら理解しやすいので、皆さんも興味深く感じるのではないかと思います。【プッペの法則】[Puppe's rule]:複

ワイドラー徴候(Wydler's sign)

今回は溺死の際に認められることのある"ワイドラー徴候"について書いていきます。所見というか現象といったところでしょうか。想像以上に単純な現象ですので肩の力を抜いて読んでもらえればと思います。【ワイドラー徴候】[Wydler's sign]:胃内容を静置すると3層に分離する現象。上から泡沫(気体)→溺水(液体)→胃内容物(固体)の3層に分かれる。詳しくみていきましょう。【ワイドラー徴候】これは"溺水
今回は高度のストレス下で起こる解剖所見である"ヴィシュネフスキー斑"[Wischnewski spots]"カーリング潰瘍"[Curling's ulcer]"クッシング潰瘍"[Cushing ulcer]を取り上げていきたいと思います。皆さんも「最近ストレスで胃の調子が...」という経験があると思います。「ストレス性の胃潰瘍・十二指腸潰瘍」という言葉を聞いたことがある人もいるかも知れません。この

パルタウフ斑とタルデュー斑

今回のテーマは毛細血管の破綻によって生じる"パルタウフ斑"と"タルデュー斑"です。実際この言葉を聞いたことがない人は多いと思います。これら斑状出血は、一般の方は知らなくて当然なくらい法医学の中でもまずまずなマイナー所見です。ただ知っていれば格好いいですからね。今回は自分自身の備忘録の意味も込めて、これら出血について書き留めていきたいと思います。2つの斑状出血の簡単な概要は以下の通りです。【パルタウ

シモンの出血(Simon's bleedings)

今回は、縊頚でよく認められるとされる"シモンの出血" [Simon's bleedings]について書いていきます。そもそも縊頚[いけい]とは、簡単に言うと"首吊り"のことでした。(参考記事:「縊頚」)縊頚は自他殺鑑別の観点からも、細かな所見も注意して観察する必要があります。首吊りにおける所見として、イメージしやすいのはやはり"頚部の索痕"だと思います。その他にも、・顔面がうっ血する・眼瞼結膜に溢
『法医学者は少ない』という話はよく聞きますよね。私自身も常々「興味がある方は是非一度法医学教室へ!」なんてことを言っています。では『実際に法医学を目指す医学生は少ないのか?』今回はこのテーマについてリアルな数字と一緒にみていきたいと思います。医学生に対するアンケート結果(※複数選択可)によると...【アンケート時点で将来のキャリアとして「社会医学」と答えた医学生は全体の"10.0%"】でした。お世
今回のテーマは『実際の法医学がドラマと違う点』です。一般の方が法医学をイメージする際、おそらくそのソースは法医学ドラマだったりすることが多いと思います。私も法医学ドラマが好きでよく観ています。最近のドラマは割と実際の法医学に準拠している気がしますね。(昔のドラマは...なものもありましたが笑)ただ法医学者の私からみてみると、やはり実際の法医学と違っている点もまだちょこちょこあるんですよね。今回はそ