今回は特に頭部外傷でよく認められる"直撃損傷・対側損傷"について書きたいと思います。頭をぶつけた時、ぶつけた側の脳にダメージを受けるのはイメージできると思うのですが、実際はぶつけた方とは逆の反対側の脳に(も)ダメージを受けていることがあります。この際の、ぶつけた側の損傷を"直撃損傷"、ぶつけた側と反対側の損傷を"対側損傷"と呼びます。ここでの重要なポイントが『(そちら側を)ぶつけていないにも関わら
今回のテーマは"死因の競合"です。この言葉を聞いたことがある人は少ないと思います。しかし、法医学者にとってはとても重要な考え方で、死因を考える上で必須の知識なんです。今回はそんな「死因の考え方」について書いていきたいと思います。ご遺体を目の前にした際、致命傷が1つだけであれば死因を判断するのは簡単です。しかし、現実はそんなケースばかりではなく、損傷・疾患が複数存在する場合が多々あります。この場合に
前回の記事で、実際の法医学者の具体的なポスト数の話ができなかったので、追加で書きたいと思います。(参考記事:「法医学者が少ない理由」)主に法医学教室における①教職員 (定員数・現員数・役職別)②医師免許保有者数 (現員数・役職別)③技術職員 (定員数・現員数)④事務職員 (現員数・勤務形態)今回はこれらのデータをみていきたいと思います。①教職員全体(常勤)常勤職員の定員は、最小2人~最大7人、平均
皆さんも「法医学者が少ない」というのは知っているかと思います。『法医学者は140人』なんて話もよく聞きますよね。では、その理由は何なのか...?これについて知っている人は実際多くないと思います。今回は「法医学者が少ない理由」について書いていきたいと思います。大きな理由として、以下の2つが挙げられます。・ポストが少ないから・志望者が少ないから一つずつ見ていきましょう。『ポストが少ないから』法医学者と
これまでこのブログでも何度も書いてきていますが、法医学者には"三大責務"があります。・解剖・研究・教育この3つです。このうち、解剖や教育というのは、言い方は悪いですが、ある意味「否が応でもやらざるを得ない」と言えます。警察から解剖依頼があれば、特段の理由がない限り原則解剖は行います。(都道府県などによって解剖件数はまちまちですが)教育についても、学生さんは毎年いますので「今年は法医学の講義はやりま

法医学への決め手

たまには私の思い出話でも。法医学というのは、医師の中でも圧倒的にイレギュラーなコースです。いくら志を強く抱いていても、実際に進むに当たって悩みや不安は尽きないはずです。何を隠そう、私もそのうちの一人でした。そんな不安を取り除いてくれた"決め手"。今回はこれについて自分自身を振り返り書いていきたいと思います。迷える子羊の何か助けになれば...。私にとってのこの"決め手"は...【法医学教室の先生方】
現在日本において、"死"は原則三徴候説に基づいて診断されてます。ところが、以前も書きましたが、法律でこの"死"を直接規定・定義したものはないと言われています。(参考記事:「三徴候説」)臓器移植法(臓器移植に関する法律)に関しても、「脳幹を含む全脳の機能が不可逆的に停止するに至ったと判定された者」=「脳死した者」から「医師が移植術に使用されるための臓器を摘出することができる」ということを規定している
2021年8月20日発売 岩波新書 (出版社URL)『法医学者の使命「人の死を生かす」ために』(著:吉田 謙一)-異状死の死因を解剖・検査を通して究明し、法的判断の根拠を提供するのが法医学者の役割だ。その判断はどのように行われるのか。法医学者が死因を誤り、犯罪死を見逃すのはどのような場合か。日本の刑事司法および死因究明制度のどこが問題か。長年第一線で活躍を続け、数々の冤罪事件の鑑定を手がけた法医学
今回は"法昆虫学"について書きたいと思います。(参考記事:「法昆虫学」)私自身は法昆虫学の専門家ではないので、あくまで一般論としてのお話になりますが...。「法医学における昆虫学」と言うと"ハエ・ウジ"が最も馴染みがあると思います。しかし、今回はあえてそこを避け"シデムシ"と"エンマムシ"について書きたい!最後までお付き合いいただければ幸いです。"シデムシ"と"エンマムシ"はどちらもご遺体に集まっ
前回は「全国の法医学教室に在籍する法医学者の数」をみました。(参考記事:「法医学教室の人員数」)それを踏まえて、今回は全国の解剖件数などのデータを見つつ、地域ごとの1人の法医学者の負担について考えたいと思います。全国の解剖件数等は以前取り上げましたが、改めて新しいデータを見直したいと思います。(参考記事:「日本の解剖率」)かいつまんで要点を抽出すると、【常勤医師1人当たりの年間解剖数:82件】とな