皆さんも「法医学者が少ない」というのは知っているかと思います。『法医学者は140人』なんて話もよく聞きますよね。では、その理由は何なのか...?これについて知っている人は実際多くないと思います。今回は「法医学者が少ない理由」について書いていきたいと思います。大きな理由として、以下の2つが挙げられます。・ポストが少ないから・志望者が少ないから一つずつ見ていきましょう。『ポストが少ないから』法医学者と
これまでこのブログでも何度も書いてきていますが、法医学者には"三大責務"があります。・解剖・研究・教育この3つです。このうち、解剖や教育というのは、言い方は悪いですが、ある意味「否が応でもやらざるを得ない」と言えます。警察から解剖依頼があれば、特段の理由がない限り原則解剖は行います。(都道府県などによって解剖件数はまちまちですが)教育についても、学生さんは毎年いますので「今年は法医学の講義はやりま

法医学への決め手

たまには私の思い出話でも。法医学というのは、医師の中でも圧倒的にイレギュラーなコースです。いくら志を強く抱いていても、実際に進むに当たって悩みや不安は尽きないはずです。何を隠そう、私もそのうちの一人でした。そんな不安を取り除いてくれた"決め手"。今回はこれについて自分自身を振り返り書いていきたいと思います。迷える子羊の何か助けになれば...。私にとってのこの"決め手"は...【法医学教室の先生方】
現在日本において、"死"は原則三徴候説に基づいて診断されてます。ところが、以前も書きましたが、法律でこの"死"を直接規定・定義したものはないと言われています。(参考記事:「三徴候説」)臓器移植法(臓器移植に関する法律)に関しても、「脳幹を含む全脳の機能が不可逆的に停止するに至ったと判定された者」=「脳死した者」から「医師が移植術に使用されるための臓器を摘出することができる」ということを規定している
2021年8月20日発売 岩波新書 (出版社URL)『法医学者の使命「人の死を生かす」ために』(著:吉田 謙一)-異状死の死因を解剖・検査を通して究明し、法的判断の根拠を提供するのが法医学者の役割だ。その判断はどのように行われるのか。法医学者が死因を誤り、犯罪死を見逃すのはどのような場合か。日本の刑事司法および死因究明制度のどこが問題か。長年第一線で活躍を続け、数々の冤罪事件の鑑定を手がけた法医学
今回は"法昆虫学"について書きたいと思います。(参考記事:「法昆虫学」)私自身は法昆虫学の専門家ではないので、あくまで一般論としてのお話になりますが...。「法医学における昆虫学」と言うと"ハエ・ウジ"が最も馴染みがあると思います。しかし、今回はあえてそこを避け"シデムシ"と"エンマムシ"について書きたい!最後までお付き合いいただければ幸いです。"シデムシ"と"エンマムシ"はどちらもご遺体に集まっ
前回は「全国の法医学教室に在籍する法医学者の数」をみました。(参考記事:「法医学教室の人員数」)それを踏まえて、今回は全国の解剖件数などのデータを見つつ、地域ごとの1人の法医学者の負担について考えたいと思います。全国の解剖件数等は以前取り上げましたが、改めて新しいデータを見直したいと思います。(参考記事:「日本の解剖率」)かいつまんで要点を抽出すると、【常勤医師1人当たりの年間解剖数:82件】とな

法医学教室の人員数

全国の法医学者の人数は"140人"や"150人"などとよく言われます。ここでの法医学者は"法医認定医"の数を言っています。しかし、法医学者はそれだけではありません。医師以外にも歯科医師や検査技師といった法医学者達が法医学で働いています。それなら、法医学教室で働いている人達を全員合わせると一体どれくらいの人数が法医学教室で働いているのでしょうか。今回はこれについて書いていきたいと思います。結論から書
今回は死亡時刻を推定する際に、深部体温(直腸温)以外の情報から推定する方法について書きます。(参考記事:「直腸温法」)具体的には、①死斑②死後硬直③角膜混濁④腐敗変色この4つを参考にする方法です。各所見のまとめは上画像の通りです。例のごとく医師国家試験の過去問を取り上げて説明していきたいと思います。[92E11]77歳の男性。一人暮らし。肺気腫による低換気状態であり、本人の希望で在宅療養をしていた
前回「死亡時刻の推定」について医師国家試験の過去問を取り上げて解説しました。今回も法医学に関する過去問について書いていこうと思います。テーマは『死亡診断書・死体検案書の"死亡したとき"はどの時刻を書くか?』です。おそらく法医学に詳しい方なら、「それは(死亡確認時刻でなく)死亡時刻でしょ」と思うかも知れませんね。そして、実際に"死亡診断書記入マニュアル"にも『死亡確認時刻ではなく死亡時刻を記入するこ