今回のテーマは「行政解剖と承諾解剖の違い」です。医師の中でも両者を一緒くたに考えているドクターはいます。そもそもの"行政解剖"や"承諾解剖"については別記事をご参考ください。(参考記事:「行政解剖・承諾解剖」)結論は、行政解剖:遺族の同意・承諾は"不要"承諾解剖:遺族の同意・承諾は"必要"ここに尽きます。詳しくみていきましょう。【行政解剖には遺族の同意・承諾が"不要"】これはよく勘違いされています

爆発損傷・爆傷

今回は"爆発による外傷"について書いていきます。"爆発損傷"や"爆傷"は、工場や鉱山によで起こり得る災害です。救急医学では"CBRNE災害"(シーバーン)のひとつとして挙げられます。化学:Chemical生物:Biological放射性物質:Radiological核:Nuclear【爆発物】:Explosive特殊なケースではありますが、その規模や被害の大きさは重大ですので、今回取り上げます。『

法医学のアトラス

医学において、重要な所見や病気の写真をまとめた画像集のことを"アトラス"と呼びます。"アトラス"は"教科書"とは違い、用語の説明などは最低限しか書かれていません。「そこから新たに知識を得る」というよりは、「すでにある知識を強固にする」ための学習ツールという感じでしょうか。法医学では"肉眼的な所見"がとても重要であり、それを多数収めた"アトラス"は強力な学習ツールと言えます。今回はその"法医学アトラ
ドラマではよく法医学者が死亡現場に出向く姿が描かれていますが、実際はどうなのか?今回はこのテーマについて掘り下げていきたいと思います。結論としては、基本的には【死亡現場には行かない】です。ただし極々稀ですが、警察の要請があれば実際に法医学者が自ら赴くことはあります。詳しくみていきましょう。法医学者は基本的に現場には赴きません。警察がご遺体を法医学教室に運んできてくれます。そして剖検室でご遺体を拝見
【法医学者になるには何年かかるか?】【最年少で何歳からか?】という質問が多いので答えたいと思います。答えは、最短では...【25歳】医師免許取ってすぐ (※臨床研修・大学院期間は無し)通常では...【31歳】医師免許取得6年後 (※臨床研修2年間+大学院4年間)この詳しい意味を見ていきましょう。(参考記事:「法医学者になるには」)ここでは法医学医(法医学を専門とする医師)になることを前提として話し
今回のテーマは「法医学と臨床医学の連携に関する実務上の問題」です。我々法医学者は解剖に際して、かかりつけ医や搬送先病院から(診療)情報を頂きます。これは死因究明するのに当たって絶対不可欠と私は思っています。しかし、そういった診療情報を提供いただけない医療機関が多いのが現状です。私は『まだまだ両者の連携は弱い』と感じています。今回はその現状について書いていきたいと思います。そういった診療情報を、我々
前回記事の評判が良かったので、より最近の事件(ほぼ平成〜)についても取り上げたいと思います。(参考記事:「Wikipedia法医学事件(前編)」)公判中のものもありますので、あまり深入りはできません。また私はどの事件についても全く関係はありませんのでご安心ください。・パロマ湯沸器死亡事故(1985-2005)・トリカブト保険金殺人事件(1986)・東電OL殺人事件(1997)・時津風部屋力士暴行死
今回はWikipediaに載っている法医学的に詳細に記載された事件を取り上げたいと思います。・小笛事件(1926)・下山事件(1949)・弘前大教授夫人殺し事件(1949)・別府3億円保険金殺人事件(1974)・遠藤事件(1975)・柏の少女殺し事件(1981)・みどり荘事件(1981)・山下事件(1984)・足利事件(1990)以上の9件を事件発生の年代順にみていきます。【小笛事件】(ウィキリン
身内が亡くなった際、多くの遺族が解剖を終えたご遺体を引き取ります。しかし、身寄りがいなかったり、いろいろな事情で遺族・親族が引き取りを拒否されるご遺体もいらっしゃいます。今回はそういったご遺体にまつわるお話を書きたいと思います。当然解剖が終わりますと、最終的に荼毘に付されるわけなのですが、解剖後のご遺体は引き取り人である"ご遺族・ご親族"にお渡しすることになります。通常はそこから先は普通のお葬式の
今回は哲学的なテーマです。『腐敗したご遺体を解剖することに意味はあるのか?』です。皆さんはどう考えますか。我々の扱うご遺体は病理のそれとは違います。場合によっては腐敗したご遺体と向き合うことがあります。それでも依頼を受けた以上は解剖を行います。しかし、腐敗の程度にはよりますが、高度に腐敗した場合は解剖しても死因が特定できないことも多いのが実際です。それならば、わざわざご遺体に侵襲を加え、法医学者自