前回記事の評判が良かったので、より最近の事件(ほぼ平成〜)についても取り上げたいと思います。(参考記事:「Wikipedia法医学事件(前編)」)公判中のものもありますので、あまり深入りはできません。また私はどの事件についても全く関係はありませんのでご安心ください。・パロマ湯沸器死亡事故(1985-2005)・トリカブト保険金殺人事件(1986)・東電OL殺人事件(1997)・時津風部屋力士暴行死
今回はWikipediaに載っている法医学的に詳細に記載された事件を取り上げたいと思います。・小笛事件(1926)・下山事件(1949)・弘前大教授夫人殺し事件(1949)・別府3億円保険金殺人事件(1974)・遠藤事件(1975)・柏の少女殺し事件(1981)・みどり荘事件(1981)・山下事件(1984)・足利事件(1990)以上の9件を事件発生の年代順にみていきます。【小笛事件】(ウィキリン
身内が亡くなった際、多くの遺族が解剖を終えたご遺体を引き取ります。しかし、身寄りがいなかったり、いろいろな事情で遺族・親族が引き取りを拒否されるご遺体もいらっしゃいます。今回はそういったご遺体にまつわるお話を書きたいと思います。当然解剖が終わりますと、最終的に荼毘に付されるわけなのですが、解剖後のご遺体は引き取り人である"ご遺族・ご親族"にお渡しすることになります。通常はそこから先は普通のお葬式の
今回は哲学的なテーマです。『腐敗したご遺体を解剖することに意味はあるのか?』です。皆さんはどう考えますか。我々の扱うご遺体は病理のそれとは違います。場合によっては腐敗したご遺体と向き合うことがあります。それでも依頼を受けた以上は解剖を行います。しかし、腐敗の程度にはよりますが、高度に腐敗した場合は解剖しても死因が特定できないことも多いのが実際です。それならば、わざわざご遺体に侵襲を加え、法医学者自
今回は法医学者とよく間違える単語についてみていきます。以前チラッと触れたのですが、改めてまとめたいと思います。(参考記事:「法医学者と法医・法医学医」)・法医学者:法医学を専門とする学者 (※医師・非医師を問わない)・法医/法医学医:医師免許を持つ法医学者・監察医:都道府県から任命された行政解剖を行う医師・解剖医:解剖する医師・検視官:現場に臨場し検視を行う警察官・病理医:病理学の臨床医師・警察医

精液検査

今回は"精液検査"についてです。性犯罪が起きた場合、その行為が存在したことを証明しなければなりません。男性が加害者である場合に行われるのが"精液検査"です。『顕微鏡で精子を直接確認する』というのは誰しもパッと思いつくと思います。しかし、精液検査はそれだけではありません。・紫外線検査・PSA簡易検出キット・酸性ホスファターゼ試験:SMテスト・コリン結晶試験:フローレンス法・スペルミン結晶試験:ハルベ

溢血点・溢血斑

今回は法医学でも頻繁に出てくる"溢血点"について書きたいと思います。ちなみに溢血点...これは[イッケツテン]と呼びます。首吊り自殺など"頚部圧迫による窒息"でよく聞かれますね。また同時に"急死の三徴"として「心臓血流動性、臓器うっ血、溢血点」のひとつであることも有名です。(※窒息も"急死"です)詳しくみていきましょう。溢血点:『過度なうっ血(静脈のうっ滞)によって毛細血管が破綻・出血し、それが肉

DNA鑑定2 (アメロゲニン遺伝子)

DNA鑑定の目的のひとつに"性別判定"があります。(参考記事:「DNA鑑定1」)「性別判定なんて見た目でわかるでしょうが」と思われる方も多いと思います。実際にそうなんですよね。乳部や陰部などをみれば誰でもすぐにわかりますし、法医学者であれば骨をみるだけで性別を判断することも可能です。しかし、それができない場面にも我々法医学者はしばしば出くわします。ひとつは犯罪現場ですね。DNAは手に入ったが、肝心

DNA鑑定1

今回は"DNA鑑定"について書きたいと思います。専門的な内容を書き出すと長くなってしまうので、今回はできる限りさわりを簡潔に書いていきたいと思います。気になる方は専門書を読んでください。笑今回はDNA検査の総論として、特に、『DNA検査は①何のために、②何に着目して行われるのか?』という話に焦点を絞って書きます。とは言え、まずはそもそもの"DNA鑑定"についてです。DNA鑑定:『個人のDNA配列(
皆さんが普段?目にするであろう"死因統計"。医師(歯科医師)の作成する死亡診断書・死体検案書を基にして、1年に1回、人口動態統計として集計されています。今回のテーマはこの"死因統計の不正確性"です。我々医師が書いた死亡診断書・死体検案書は遺族に手渡されます。そして遺族等を通して役所に提出されます。その情報は次に役所から厚生労働省に行き、最終的に死因統計としてまとめられます。このシステムは、医師が死