近年、警察医の先生方が中心になって行われている警察医業務(検案等)の費用についていろいろと議論されるようになりました。いわゆる「検案料問題」です。これは簡単に言うと、①遺族負担である (保険適用外)②地域によって検案料ないし検案書発行料が違うこの2点が主な問題になってきます。みていきましょう。日本においては、病院以外で亡くなった場合でも、原則として必ず1度は医師の診察もしくは検案を受けなければなり
皆さんもよく聞く"老衰"という病名。2020年の死因統計では死因順位の第3位であり、90歳以上においては第1位となっています。(参考記事:「死因統計」)老衰死の総数は約13万人(全死亡者の約9.6%)とおよそ10人に1人が"老衰"によって亡くなっています。それでは『"老衰"とは一体どういうものなのか?』そして『"老衰"にはどんな問題があるのか?』今回はそんな"老衰"に焦点を当てたいと思います。"老
よくご遺族から確認される項目に「いつ亡くなったのか?」というのがあります。死亡時刻は死体検案書にも記載しなければならず、法医学上も大変重要な事項です。ですが、実際に検案・解剖結果のみから死亡時刻が「○時●分」レベルまで特定することは極めて難しいのが現実です。場合にもよりますが、検案・解剖結果のみの情報なら、現実的に"死亡時刻の正確性"はせいぜい『時間単位の推定』『前後数時間のズレはあり得る』が精一
「法医学」と聞くと、ドラマのような"犯罪事件"を皆さんは連想すると思います。しかし、実際に犯罪に関係した解剖は多くないんです。『法医学で扱う死因の7割が病死である』とよく言われています。今回はこれについて書いていきたいと思います。日本の法医解剖率は『全死亡者の"1.4%"』『警察取扱死体の"11.8%"』でした。(参考記事:「日本の解剖率」)そんな少ない中、法医解剖で扱う死因の殆どが犯罪が関係した
新型コロナウイルス(COVID-19)が猛威を振るっています。そうした中、徐々に国民にもワクチン接種が広がってきています。地域にもよるとは思いますが、我々法医学者については、医療従事者等の"等"に含まれる職種として、一般の方よりも早い段階でワクチン接種を行いました。もちろん私自身も2回のワクチン接種を完了しています。私個人の話で言いますと、一般の方へのワクチン接種のお手伝いもしています。今回はこの
解剖の種類にも依りますが、解剖終了後には原則として遺族へ結果説明を行います。亡くなったばかりの大切な方の身体をお借りしたわけなので、我々法医学者にはその結果を説明する義務があります。おろそかにすることは決して許されません。これは法医学者にとって重要な役目のひとつだと私は思ってます。私自身も多くの遺族に対して結果説明を行ってきていますが、その中でも遺族からしばしば聞かれる質問をいくつか挙げたいと思い
今回のテーマは「行政解剖と承諾解剖の違い」です。医師の中でも両者を一緒くたに考えているドクターはいます。そもそもの"行政解剖"や"承諾解剖"については別記事をご参考ください。(参考記事:「行政解剖・承諾解剖」)結論は、行政解剖:遺族の同意・承諾は"不要"承諾解剖:遺族の同意・承諾は"必要"ここに尽きます。詳しくみていきましょう。【行政解剖には遺族の同意・承諾が"不要"】これはよく勘違いされています
今回は"爆発による外傷"について書いていきます。"爆発損傷"や"爆傷"は、工場や鉱山によで起こり得る災害です。救急医学では"CBRNE災害"(シーバーン)のひとつとして挙げられます。化学:Chemical生物:Biological放射性物質:Radiological核:Nuclear【爆発物】:Explosive特殊なケースではありますが、その規模や被害の大きさは重大ですので、今回取り上げます。『
医学において、重要な所見や病気の写真をまとめた画像集のことを"アトラス"と呼びます。"アトラス"は"教科書"とは違い、用語の説明などは最低限しか書かれていません。「そこから新たに知識を得る」というよりは、「すでにある知識を強固にする」ための学習ツールという感じでしょうか。法医学では"肉眼的な所見"がとても重要であり、それを多数収めた"アトラス"は強力な学習ツールと言えます。今回はその"法医学アトラ
ドラマではよく法医学者が死亡現場に出向く姿が描かれていますが、実際はどうなのか?今回はこのテーマについて掘り下げていきたいと思います。結論としては、基本的には【死亡現場には行かない】です。ただし極々稀ですが、警察の要請があれば実際に法医学者が自ら赴くことはあります。詳しくみていきましょう。法医学者は基本的に現場には赴きません。警察がご遺体を法医学教室に運んできてくれます。そして剖検室でご遺体を拝見