法医学者は忙しい

今回は「法医学者の忙しさ」について書いていきたいと思います。皆さんは法医学者の仕事について、どのようなイメージを持っているでしょうか?ドラマを観ていると「プライベートも充実して子育てにも奮闘して...」という感じで、割とゆったりとしているイメージを持っているかもしれませんが、意外?と忙しいです。以前法医学者の生活についての記事を書きました。参考記事:「法医学者の一日」参考記事:「法医学者の休日」こ
以前『法医学者になるまで何年かかるか?』という記事を書きました。(参考記事:「何年かかるか?」)今回は『法医学者になるまでにいくらの費用がかかるのか?』というのを書いていきたいと思います。法医学者を目指す人にとって"お金"も現実的な問題ですからね。実質的には「大学の学費」「大学院の学費」になってきます。国立大学の学費:349万6800円 (6年間)国立大学院の学費:242万5200円 (4年間)合
我々法医学者にとって、警察から提供される情報はとても重要です。それをなくして正確な死因究明は不可能と言って良いでしょう。なぜなら、現行の法医学制度では、我々が実際に現場で情報を収集するわけではないからです。そうした中、『服用していた内服薬から警察が誤って推測した病名を医師が死体検案書に記載していた』というのがニュースになりました。この問題点について今回はみていきたいと思います。結論から言うと、『医

キャスパー徴候 (Casper's sign)

今回は"キャスパー徴候"(Casper's sign)について書いていきたいと思います。"キャスパー"と聞くと、法医学に詳しい方は...「あぁ、水や土の中だと腐敗が遅れるヤツねぇ。」と思うかも知れません。...しかし、それではありません!それは"キャスパーの法則"(Casper's law)です。(参考記事:「キャスパーの法則」「腐敗」)同じ"キャスパー"でも徴候と法則で大きく意味が違うんですね。

輪ゴム症候群 (rubber band syndrome)

今日は趣向を変えて、過去に出会った個人的に思い出深い疾患について書きたいと思います。それは"輪ゴム症候群"です。皆さんはこの病気を聞いたことがありますか。これは別に法医学で有名な病名なわけでもないのですが、皆さんにも知ってほしくて取り上げようと思います。英語で"Rubber Band Syndrome"というのが正式名称のようです。正式名称かは分かりませんが、日本語では"輪ゴム症候群"となりますか
もしかしたら皆さんも実際に見たことがあるかも知れない"死亡診断書・死体検案書"。これ↓ですよね。実はこの様式になったのは平成7年1月からでした。それまでは↓の画像のような旧様式の死亡診断書・死体検案書を使っていたんですよ。意外とあっさりしていますよね。具体的には新様式(現行)への変更に伴い、ICD-10に従って・死因欄を3つ→4つへ増加・疾患の終末期としての心不全の記載は原則禁止・妊娠や分娩の状況

検案料の適正報酬は?

近年、警察医の先生方が中心になって行われている警察医業務(検案等)の費用についていろいろと議論されるようになりました。いわゆる「検案料問題」です。これは簡単に言うと、①遺族負担である (保険適用外)②地域によって検案料ないし検案書発行料が違うこの2点が主な問題になってきます。みていきましょう。日本においては、病院以外で亡くなった場合でも、原則として必ず1度は医師の診察もしくは検案を受けなければなり
皆さんもよく聞く"老衰"という病名。2020年の死因統計では死因順位の第3位であり、90歳以上においては第1位となっています。(参考記事:「死因統計」)老衰死の総数は約13万人(全死亡者の約9.6%)とおよそ10人に1人が"老衰"によって亡くなっています。それでは『"老衰"とは一体どういうものなのか?』そして『"老衰"にはどんな問題があるのか?』今回はそんな"老衰"に焦点を当てたいと思います。"老
よくご遺族から確認される項目に「いつ亡くなったのか?」というのがあります。死亡時刻は死体検案書にも記載しなければならず、法医学上も大変重要な事項です。ですが、実際に検案・解剖結果のみから死亡時刻が「○時●分」レベルまで特定することは極めて難しいのが現実です。場合にもよりますが、検案・解剖結果のみの情報なら、現実的に"死亡時刻の正確性"はせいぜい『時間単位の推定』『前後数時間のズレはあり得る』が精一

法医学は病死が7割

「法医学」と聞くと、ドラマのような"犯罪事件"を皆さんは連想すると思います。しかし、実際に犯罪に関係した解剖は多くないんです。『法医学で扱う死因の7割が病死である』とよく言われています。今回はこれについて書いていきたいと思います。日本の法医解剖率は『全死亡者の"1.4%"』『警察取扱死体の"11.8%"』でした。(参考記事:「日本の解剖率」)そんな少ない中、法医解剖で扱う死因の殆どが犯罪が関係した