解剖時の手袋

今回は解剖時の手袋・グローブについて書きます。手術では綺麗に手を洗った後、アルコールを吹いてラテックスのグローブを着けますよね。では解剖ではどうなのか?皆さんは知っていますか。結論から先に書くと...実は『手袋を3重にも着けて解剖している』んです。手袋をする理由は2つあります。・"自分が"感染しないため・"相手を"感染させないためこの2つの観点があることを理解する必要があります。【自分が感染しない
今回は主に法医学を目指している医学生・研修医さんに向けた内容です。それ以前の方(中学生や高校生の方)は、今は何よりもまず"医学部に入学すること"を第一に考えてください。おそらくそういった方は『法医学者となる前に研修医を経た方が良い』という話はよく耳にしたことはあると思います。私自身もそう思っていますし、それについては多くの法医学者で異論のないところだと思いますが、近年はその臨床研修の先にある"専門
今回はキズを細かく観察して、凶器(成傷器)の詳細を推察していみたいと思います。とは言っても、生の画像はお見せできないので、例によって医師国家試験の問題画像を参照します。※今回の記事には実際のキズの画像が含まれています。人によってはショッキングに感じる人がいるかも知れないのですが、キズを見ないと説明できませんのでご了承ください。問題自体は【第112回 医師国家試験 C問題49番】です。中年の男性。道
前回に引き続き"創傷"について、医師国家試験の問題をみていきます。今回は創部位の名称をメインにみていき、前回の創傷の種類ではどうなっているのか?を確認したいと思います。今回の問題は【第96回 医師国家試験 G問題63番】です。頭部に以下の性状を有する3cmの創傷が認められた.創縁:不整で表皮剥脱を伴う.創端 <創角>:両端ともに鈍的である.創璧:不整で毛根を露出している.創洞:両創壁を
今回は"切創"についてです。実際に医師国家試験で出題された問題を見ながら解説していきたいと思います。取り上げる問題は【第104回 医師国家試験 B問題43番】です。※画像は人によってショッキングな印象を受けるかも知れませんので、記事の1番最後に載せています。20歳の男性。自室で倒れているのを家族に発見され搬入された。これらの創傷はどれか。a. 刺創b. 切創c. 挫創d. 裂創e. 割創【正答:B

法医学の学会

今回は法医学にまつわる"学会"について書いていきます。学会は『学術研究の向上や発達を目的とする団体』のことです。具体的には会員向けに、・研究を発表の場を提供する (学会発表)・学術雑誌を発行する・セミナーを開催する・その分野の指針を示す・認定医や専門医の認定をするなどの業務を行っています。会員は基本的にその道の研究者であることが原則であり、「これら業務をその道の研究者自身が行っている」というのも学

指紋法

法医学と聞いて皆さんが最もイメージするのが"指紋"かも知れません。ドラマでもよく目にしますが、実際に自分の指紋をまじまじと見たことのある人は少ないのではないでしょうか。指紋には【終生不変】:一生涯で変化することはない【万人不同】:二人として同じ指紋の人はいないという性質があり、その特徴が犯罪捜査等に利用されています。"指紋"に関する知識は法医学者にとっても必須です。今回はそんな"指紋法"について簡
首吊りや溺死といった窒息の種類はありますが、果たしてその窒息がどれくらい経つと亡くなってしまうのか?裏を返せば『どれくらいまでなら救えるか?』ということに繋がり、これは救急医学にも関係してくる話です。教科書的には、『窒息死の全過程は【4-10分】で完成する』と言われます。つまり早ければ窒息から4分で亡くなってしまいます。(正確には「不可逆に呼吸が停止してしまう」)その過程はいくつかのフェーズに分け

焼死と火傷死の違い

乾燥した時期になると"火災"が増えますが、皆さんは「なぜ火災に遭うと亡くなってしまうのか?」について考えたことがありますか。「そんなの火で焼けたから亡くなったんでしょ」そう思った方は是非最後まで読んでいただきたいですね。実際はそんなご遺体ばかりではないんです。火災に関連した死亡は大きく分けて以下の3つがあります。『火傷死』:直接的な火炎による死亡。『一酸化炭素中毒死』(CO中毒死):火災によって発

法医学の必要性・目的

法医業務、特に"解剖"はかなり高侵襲的な行為と言えます。だからこそ、その適応は必要最低限であるべきだと私自身は常に思っています。ただ現実的には解剖の必要性は高く、現代の日本においては法医学は必要不可欠です。今回はその法医学の役割や意義について考えていきたいと思います。法医学会の掲げる法医学の目的は、・個人の基本的人権の擁護・社会の安全・福祉の維持これらに寄与することです。...とは言ってもなかなか