今回は法医学の矛盾点、私が気になっていることについて書きたいと思います。私自身は明確な答えを持っていませんので、皆さんにも一緒に考えてほしい内容です。【ご遺体を解剖できるのは誰か?】これに対する解答は以前このブログでも書きました。(参考記事:解剖ができるのは?)答えは原則的に『死体解剖資格を持つ医師・歯科医師』でした。ある有名な教科書の一節にこうあります。『死亡の確認は医師の医学的判断あるいは技術
今回は解剖中の法医学者の服装について書きたいと思います。上はディスポーザブルガウンとビニールエプロンを着ますので、「それらの下の服装」という意味ですよ。皆さんはどのようなイメージを持っていますか。最近はドラマでもそういう細かな描写も忠実に再現していますので、もしかしたらイメージ通りかも知れませんね。私自身は【スクラブ】を着て解剖を行っています。救急外来の先生達が着ていたり、手術着・オペ着に似た半袖
今回は創傷の中でも、特に"労働災害"について書いていきたいと思います。基本的な内容については創傷① ② ③の記事もよろしくお願いします。労働災害とは『業務上の事由または通勤による負傷、疾病、障害、死亡』を指し、発生した場合は事業者が労働基準監督署に届け出る義務があります。死亡者は年々減ってきているものの、それでも年間1000人弱は労働災害によって亡くなっています。この通称"労災"は労災認定・補償の
前回の"生活反応"に関連して"超生反応"について書きたいと思います。今回のテーマは【人は死後も生きているのか?】です。「いや亡くなっているんだから生きているわけないでしょう」そう思う方にはぜひ最後まで読んでいただきたいです。結論から言うと、ヒト全体としては死亡しても、個々の細胞はその後もしばらく生きていることがあります。その種々の細胞によって起こる反応を"超生反応"と呼びます。先に参考記事として
今回は法医学で最も重要な概念のひとつと言える"生活反応"(生体反応)について書きたいと思います。この"生活反応"は、その損傷が生前に出来たものか?死後に出来たものか?を判断する上で必須となる考え方です。『生前か?死後か?』によって、殺人罪となるのか?死体損壊罪になるのか?も変わってくるため、社会的にも大変重要となります。生活反応:『生体で認められる反応』のこと。裏を返せば『死体では認められない反応
今回のテーマは"死後の日焼け"です。皆さんは亡くなったご遺体が日焼けすると思いますか?実は【死後でも人は日焼けする】という話もあるんですよ。ただその説には法医学の中でも賛否両論あって、まだはっきりとした結論は出ていないのが現状です。詳しくみていきましょう。先ほど書いたように、この現象については、法医学の中でも評価が割れています。"死後の日焼け"として報告されている症例をみますと、確かに日焼けしてい
今日は"圧死"について書いていきます。"圧死"と聞くと「ぺちゃんこになって...」なんて思う方もいるかもしれませんがそうではありません。我々の業界では"圧死"を「潰されたことによる直接的な死亡」の意味で使用していません。実は"圧死"は窒息の一種なんです。圧死:胸腹部が圧迫されたりして胸郭が固定され、それにより呼吸運動が障害されて起こる窒息死。つまり気道自体は開通していて問題ないんですよね。一時期は
今回は"凍死"について書いていきます。臨床では低体温症として治療されますが、それが過ぎると"凍死"し場合によっては我々の元に運ばれてきます。しかし、実際に「低体温でなぜ亡くなるのか?」皆さんは説明できるでしょうか。"凍死"とは言いますが、決して身体が凍ってしまって亡くなるわけではないんです。大体『体温が約30℃以下になってくると死亡する恐れが出てくる』とされます。水が凍るのが0℃以下ですから、それ
骨や血液が見つかった際、「それがヒトのものなのか?ヒト以外の動物なのか?」というのはどのように判別するのでしょうか。(人獣鑑別)例えば、もしかしたら皆さんも山登り中に骨を見つけるかも知れません。一見ギョッとしますが、もしかしたらそれはイノシシやシカの骨の可能性もあります。ただそれがヒトの骨だったら大騒ぎです。今回は、それを判別する"人獣鑑別"はどのような方法があるか?がテーマです。・肉眼による鑑別
我々法医学者は警察の依頼を受け、司法解剖や調査法解剖を行います。監察医は「監察医が必要と判断した場合」に行政解剖を行います。病院で亡くなった場合は、病理解剖が行われることもあります。詳しい解剖の種類については、参考記事(解剖について:① ② ③)をご参照ください。それではそれ以外、つまり、『病院以外で亡くなり、それが監察医がいない地域で、警察は解剖が必要と判断しないと判断したケース』で『詳しい死因